普通免許で運転可能 いすゞが「エルフ」新モデルを投入する複雑事情

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いすゞが2024年夏までに、普通免許で運転できる小型トラックをディーゼルエンジン仕様とともに発売すると報じた。その背景にあるものとは。

準中型免許の新設が生んだ問題

トラックドライバーのイメージ(画像:写真AC)
トラックドライバーのイメージ(画像:写真AC)

 18歳の若手ドライバーの雇用促進を図るはずだった準中型免許の新設だが、次第に別の問題も生じてきた。それは、市販モデルとしてラインナップされていた小型トラックの多くが、

・車体サイズの大型化
・装備の充実化
・補機類の多様化

により、車両総重量3.5t以上の準中型車相当となったことである。

 そのため、例えば18歳の若者が高校卒業と同時に普通免許を取得して運送会社に就職しても、運転できるトラックがほとんどないという問題が生じた。

「18才で準中型免許を取得できるのだから、そうすればよい」という人もいるかもしれない。しかし、免許取得の初期段階で準中型免許を選択するドライバーは稀である。しかも、普通免許から準中型免許への切り替えには教習所で20万円ほどかかるといわれている。新たに準中型免許が必要な若者に、就職時にこの費用を求めるのは、ある意味、酷である。

 もちろん、普通免許で運転できる車両総重量3.5t未満の小型トラックが市場にないわけではない。現在、最大積載量1tと1.25tのトヨタ・ダイナがあり、いずれもガソリンエンジンを搭載している。

 こうしたガソリンエンジン搭載の小型トラックは、個人商店や建設会社などの個人使用を目的としている。運送会社にとっては、ガソリンエンジンは他の車両との統一運用という点ではほとんどメリットがない。宅配に特化した日野デュトロの電気自動車(EV)トラックもその一例だが、充電インフラの拡充など運用が難しく、車両自体も高価なため、普及には至っていない。

 普通免許で運転でき、運送会社にとって使いやすい仕様の車種が求められていたことは、トラックメーカーにとってある意味想定外の出来事だっただろう。

 一般的に、トラックは法律で認められた最大サイズで運行するのが最も効率的だと考えられていた。しかし、運転免許制度の変更は新たな課題を生み出したのである。

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