普通免許で運転可能 いすゞが「エルフ」新モデルを投入する複雑事情

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いすゞが2024年夏までに、普通免許で運転できる小型トラックをディーゼルエンジン仕様とともに発売すると報じた。その背景にあるものとは。

2024年夏発売の背景

普通免許で運転できる小型トラック(画像:いすゞ自動車)
普通免許で運転できる小型トラック(画像:いすゞ自動車)

 読売新聞は2023年9月27日、いすゞ自動車(神奈川県横浜市)が普通免許で運転できる小型トラック「エルフ」をディーゼルエンジン仕様とともに2024年夏までに発売すると報じた。

 普段、小型トラックにあまり興味のない人は「全国紙の一面で何事か」と思ったかもしれない。さらにもう少し詳しい人であれば、「街中で良く見掛けるディーゼルエンジンの小型トラック、アレは普通免許で運転できないのか」とも。

 実はこれ、単純な自動車メーカーの販売戦略では片づけられない大きな問題がある。その経緯はこうだ。まず、時系列を振り返りながら、状況の背景を説明したい。

 2007(平成19)年、従来の普通免許と大型免許の間に中型免許が新設された。これは、車両総重量5t以上11t未満、積載量4.5t以上6.5t未満の車両を対象とした新しい運転免許である。また、免許取得年齢が18歳から20歳に引き上げられ、最低2年の運転経験が必要となった。

 新免許制度導入の背景には、普通免許で運転できる2tから4tクラスのトラックの大型化が進み、事故が増えていたことがある。

 中型免許の導入は、運転技術や車両感覚の未熟さによる事故を減らす一定の効果があったといわれている。しかし一方で、免許取得年齢が20歳に引き上げられ、免許取得の条件として2年以上の運転経験が追加されたことが、新たな問題を生んだ。それは、高校を卒業したばかりの若者が運送会社にドライバーとして就職することが難しくなったという雇用問題である。

 こうした問題に対応するため、2017年に普通免許と中型免許を補完する準中型免許が導入された。準中型免許の対象車両は総重量3.5t以上7.5t未満である。免許を取得できる年齢も18歳に引き下げられ、当然のことながら2年間の運転経歴も不要となった。

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