安全か効率か? 高速トラック「80km制限撤廃」問題、あちら立てればこちらが立たぬ多事争論のカオス状態
高速道路でのトラックの速度規制を引き上げに対して、有識者やジャーナリスト、業界団体などからさまざまな賛否の声が上がっている。まさに「多事争論」というべき状況だ。
速度規制を引き上げると事故が増えるのでは?

速度規制を引き上げるにあたって、一番の争点は安全性だろう。大型トラックの最高速度を80km/hと定めたのは、
・重量が重いため事故発生時の被害が重大化しやすい
・積載量に応じて制動距離が長くなる
といった理由があったからだ。
大型トラックの速度規制については、2003(平成15)年にスピードリミッターと呼ばれる速度抑制装置の装着を義務付けるなど、徹底が図られてきた。スピードリミッターの義務化後、事故発生件数が減少しており、安全対策として効果があったとの認識がなされている。さればこそ、2024年問題があるからといって速度規制を引き上げれば、事故が増えるのではという懸念はもっともだ。
一方で、大型トラック以外の速度規制は一部区間で120km/hに引き上げられた。自動車の安全性能や道路環境などが向上し、速度規制を引き上げても問題ないと見なされたからである。実際、120km/hに引き上げられた区間で事故が増えたかというと、そのような結果にはなっていない。
安全性能や道路環境などの向上は大型トラックにも当てはまる。そう考えると、大型トラックだけ速度規制の引き上げを検討しないというのは合理性を欠く。
120km/hに引き上げられた区間で、大型トラックとの最高速度の差は40km/hにも及ぶ。この差が
「新たな事故」
を生んでいるのではとの指摘もある。
当該区間は道路環境が取り分けよいということであれば、この区間を対象に大型トラックの速度規制を引き上げることも考えられる。あるいは、特積み運送会社の業界団体である全国物流ネットワーク協会が要望したように、先進安全装備を装着した大型トラックに限定して速度規制の引き上げを検討することも一案といえよう。