物流業界の救世主か、はたまた単なる“お役所仕事”か? 国交省「トラックGメン」創設、定員わずか162人というお寒い現実
「トラックGメン」とは何か

2023年7月21日、国土交通省は省内に「トラック荷主特別対策室」を設置した。いわゆる「トラックGメン」である。トラックGメンとは何なのか。まずはそこから説明したい。
2024年4月1日以降、労働基準法の改正によって、トラック運転手を含む全ての自動車運転業務関係労働者の年間時間外労働時間は最大960時間に制限される。これは日常的に長時間労働が状態化していた運送業界の労働環境を改善するために導入されたものだが、話はそう単純ではない。
危険な事故にも直結しかねないトラックドライバーの長時間労働が改善されるのはよいだろう。しかし、ドライバーの労働時間が制限されることは、結果的に運送会社が取り扱える貨物の総量が減少することに等しい。これは需要と供給との関係で運賃引き上げの理由となる。
とはいえ、現在の競争が激しい状況下では単純な引き上げという図式になりにくい。その結果、しわ寄せは弱小な運送業者に集中しかねない。
もうひとつ、時間外労働時間の制限は、そのまま運転手の収入減という状況につながりかねない。業務内容的に時間外労働に対して余裕のある運転手にとってみれば、これもまた大きな問題だ。こうした今回の法改正にともなう諸問題が、いわゆる2024年問題とされていることである。
設置の理由

一方、国土交通省がトラックGメンを設けたのはどういったことが理由だったのだろう。
それは法改正にともなってトラック運転者の労働環境が改善されるはずが、
「逆に不利益を被るといった事例」
が起きることを防ぐためである。同じく中小運送事業者に対して、大手の荷主業者や元請け業者による力関係を悪用した不当な介入等も監視対象となる。
ここまでの話だと、非常によいことのように思える。実際、有効に機能すれば業界全体の健全化に大きく貢献することは間違いない。しかし問題がないわけではない。それはトラックGメンの人員の少なさである。