安全か効率か? 高速トラック「80km制限撤廃」問題、あちら立てればこちらが立たぬ多事争論のカオス状態

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高速道路でのトラックの速度規制を引き上げに対して、有識者やジャーナリスト、業界団体などからさまざまな賛否の声が上がっている。まさに「多事争論」というべき状況だ。

速度規制引き上げを検討する理由

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 警察庁は、高速道路でのトラックの速度規制を引き上げることについて検討を開始した。これに対して、有識者やジャーナリスト、業界団体などからさまざまな賛否の声が上がっている。まさに「多事争論」というべき状況だ。

 なぜ、速度規制の引き上げを検討しているのか。一言でいえば、「2024年問題対策」である。2024年4月、時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用されることで、長距離トラックを中心に多大な影響を及ぼすことが懸念されている。

 2023年6月、政府は2024年問題対策を念頭に「物流改革に向けた政策パッケージ」を取りまとめたが、いくつもある具体案のひとつとして「高速道路のトラック速度規制の引き上げ」を掲げた。要は、最高速度が上がることで目的地までより早く到着できるようになれば、その分だけドライバーの労働時間を削減できるというわけだ。

 高速道路の最高速度は100km/h、一部区間では120km/hになっているが、大型トラック(一部の中型トラックを含む)は80km/hに制限されている。この大型トラックのみに課された制限をなくそうという議論だと考えればよい。

 その論点は、

・安全
・負担
・効果

の三つに整理される。

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