EVは、どのように使えば排出削減に効果的なのか?
EVがもたらす排出削減効果

では、EVで温暖化ガスの排出量を効率的に減らすには、どのように使うと効果的だろうか。
最悪の使い方については、見当が付く人も多いだろう。排出量の多い石炭、それも古くて効率の悪い設備で火力発電した電力だけで走らせることだ。この条件だといかにモーター駆動で効率の良いEVといえども、ガソリンエンジン車と同じぐらい、CO2を排出することになってしまう。
しかし、今時そのような条件になる国は珍しく、世界のほとんどの国でEVは排出削減になる(※1)。例えば、最近のガスタービン式火力発電による電力だけでEVを走らせた場合、だいたいHVと同じぐらいの排出削減になる(※2)。
EVは火力発電以外の電気も使える。例えば昔ながらの水力発電や原子力発電の電力も使える。さらに、自分自身がバッテリーを積んでいるので、天候次第で出力が変わる風力発電や太陽光発電の電力も活用しやすい。
(*1): F. Knobloch et al., Nature Sustainability 3 (2020) 437-447.
(*2): MITの研究チームによる可視化サイト(Carboncounter.com)で見積もれる。
発電余剰を有効活用する未来

風力発電・太陽光発電・原子力発電はそれぞれ、発電能力が余るときはそのぶん電力を安く売ったり、出力を加減したりする(いわゆる出力抑制)。
例えば、現状の日本でも、昼間に太陽光発電の電力が余って電力がほぼ0円で取引されることがある。
そのときにEVを充電すれば、代わりに夜間の消費電力やガソリンの消費が減り、国全体の化石燃料の消費量や排出量も減らせる。
安くて低排出な電力で充電でき、せっかくの電力を有効に使え、発電事業者も売れる電力が増える。再エネや原発を有効に活用して、普及を促進することもできる。
EVは大きいモバイルバッテリーでもある上、自家用車なら大抵、9割方の時間はどこかに駐車されている。そこで
・住宅
・職場
・コンビニエンスストア
・スーパーマーケット
・ショッピングセンター
・博物館
など、駐車場があるところならどこでも充電器を置けば、電力の安い時間帯を狙って充電しやすくなる。