日本にはびこる「海外BEVごり押し」説は本当か? アフリカ・東南アジアでもBEV急成長、変化を迫られているのは日本だ
海外「ルール変更押し付け」は本当か

一般的に政府としてBEVにかじを切る最も大きな理由としては、気候変動や大気汚染などの環境対策が真っ先に挙げられる。
従来は、電池の生産や発電の過程で多くの二酸化炭素が排出されるとの指摘もあったが、量産効果による効率化や二酸化炭素を排出しない再エネの普及により、
「現在は世界の95%の国と地域において、BEVが最も低排出」
とする研究も発表されている。日本国内を中心に
「日本のハイブリッド車(HV)技術に勝てずルール変更を押し付けている」
という見方もあるが、筆者(八重さくら、環境系VTuber)はこの意見には賛同しない。
HVで脱炭素を達成するには、高価で非効率なe-fuelなどの合成燃料が必要であり、e-fuelの価格は2030年でも
「ガソリンの1.5倍」
と予想されている。価格が重視される大衆車においては、維持費だけでなく車両の低価格化が進むBEVに頼ることが現実的だろう。
BEVの環境性については、筆者が以前当媒体に書いた「「EV = 日本で普及しない」といまだにいい続ける人たちへ あなたたちは基幹産業を弱体化させるつもりなのか? データで徹底証明する」(2022年10月8日配信)で詳細に解説しているので、参照されたい。
BEVにかじを切る新興国の思惑

新興国は気候変動の影響を受けやすく大気汚染が深刻化していて、これらを回避することがBEVへの移行を進めている理由のひとつだが、実はほかにも重要な事情が存在する。ごく一部の産油国を除き、多くの新興国では巨額な化石燃料の輸入が
「貿易赤字を招いている」
からだ。
例えば、免税などにより政府としてBEVの普及を促進するエチオピアでは、実際に化石燃料の輸入に毎年数千億円を費やしている。また、米エネルギー省・ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)からの報告「Pathways to Atmanirbhar Bharat(自立したインドへの道)」によると、インドでは再エネや蓄電などを活用することで、2047年までに原油の輸入を90%(年間で約32兆円に相当)削減でき、現在よりも経済的に自給自足が達成可能としている。
これまで再エネや蓄電というと高価なイメージがあり、一昔前は欧米などの先進国が中心的な役割を果たしていた。ところが近年は風力や太陽光、蓄電池などの価格が低下し、アフリカや東南アジアなどの新興国でも導入が急増。
例えば、これまで石炭火力が中心だった南アフリカでは、出力100MW以上の大規模な発電設備でも承認が不要な届け出制度に変わり、2023年の1~2月の2か月間で登録が1000MWを突破。2021年は135MW、2022年は1646MWだったことを考えると、指数関数的な成長が続いていることがわかる。
また、ケニアなど一部の国では、既に水力や地熱などの再エネが中心となっている。これらの国を含めた多くの新興国において、今後はコストが低下した再エネや蓄電を推し進めることが示されている。
燃料が不要な再エネで発電した電力を使ってBEVを走らせることで、化石燃料の輸入を減らして貿易赤字を解消、さらにエネルギー自給率を向上させ国家安全保障に寄与する。このような思惑が、新興国でBEVが注目されている理由のひとつだろう。