JR東「オフピーク定期券」メリット満載も 社員の「通勤手当抑制」に全く同意できないワケ

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JR東日本は3月18日、「オフピーク定期券」を発売開始した。本当に役立つのか。

オフピーク定期券の真の意義とは

オフピーク定期券の導入メリット(画像:JR東日本)
オフピーク定期券の導入メリット(画像:JR東日本)

 オフピーク定期券の登場で期待できることのひとつとして、企業側が

「社員の通勤手当を抑制」

して、自社の経費を削減できることがある。企業が始業時間の変更やフレックスタイム制の導入に乗り出すことで、これを抑制できるというものだ。ただ、これでオフピーク通勤を導入する企業が実際に増えるかどうかは、はなはだ疑問だ。

 新型コロナウイルス感染拡大を契機にテレワークを恒久化する企業は存在するが、あくまで一部の企業にすぎない。2021年に東京商工会議所が会員企業を対象に行った調査によると、回答した企業1465件のうち「在宅勤務制度がある」と答えた企業の割合は49.5%だった。対して「制度はなく、導入の検討もしていない」という企業の割合は

「34.9%」

となった。また「在宅勤務制度を導入しない・できない理由」には「在宅勤務ができる業務ではない」が最も目立った。

 さらに「時差出勤制度の整備状況」に関する回答では「制度がある」とした企業が48.4%だったのに対して「制度はなく、導入の検討もしていない」とした企業が

「33.3%」

となった。導入できない理由には「顧客の理解」や「時差出勤できる業務」ではないことのほか、「業務の生産性低下」が多くの割合を占めている。

 オンラインで仕事をしたり、混雑する時間帯を避けて出勤時間を遅らせたりできるのは、IT企業を始めとする、ホワイトカラーに限られている。世の中には、製造業や医療・福祉、販売店、ゴミ収集、郵便配達など、特定時間に特定場所でしかできない業種の方が圧倒的なのだ。

 社員の定期代を減らす目的で開店時間を遅らせたり、顧客が連絡してきたときに「まだ出社していません」と言えたりする企業が、世の中にどれくらいあるだろうか。

 実際に人と顔を合わせなくてはならない業種ではテレワークもフレックスタイム制の導入も困難だということは、既に明らかになっている。にもかかかわらず、わずかな料金差で劇的な混雑解消を期待するのは絵に描いた餅にすぎない。

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