「森林の可視化」無人ヘリとLiDARで実現 ヤマハ発動機が林業のスマート化を後押し
産業用無人ヘリを「森林計測」に活用
無人ヘリコプターが、林業の「スマート化」を後押ししている。
森林資源を利活用するうえで、森林の状況把握は不可欠だ。木の位置や高さ、幹の直径、材積などを計測し、整理するわけだが、従来の人による地上計測の場合、人手や手間、時間がかかるのがネックだ。
人が歩いて入る場合、1日あたりの計測面積は3haから5haだ。ドローン(無人航空機)だと多少範囲が広がるが、それでも計測面積は1日あたり約20ha、計測密度は1平方メールあたり100点程度にとどまる。1回あたりの平均航続時間は約30分だ。
対して無人ヘリコプターは、1日あたりの最大計測面積が100ヘクタール、1平方メートルあたりの計測密度は1000点になる。
ヤマハ発動機は、農業の農薬散布などで30年あまりの運用実績がある産業用無人ヘリにLiDARを搭載し、森林をレーザー計測・データ解析する「森林計測事業」を展開している。
この森林計測事業が2021年6月16日(水)、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)主催のドローン見本市「第6回Japan Drone」の表彰式で、ニュービジネス部門の最優秀アワードに選ばれた。森林の立木情報計測が林業のスマート化に貢献すること、計測した精密な地形データが林業や治山に役立つ点が高く評価されたという。
また、来場者の投票で選出されるベストオブオーディエンス部門でも最優秀アワードを受賞している。
同社の無人ヘリの航続時間は1回あたり最大約100分であり、広範囲にわたり高精度な計測ができるとともに、離発地点から離れたエリアへのアプローチも可能にしている。
無人ヘリのLiDARは、1秒間に75万回のレーザーを照射。点群データを基に、一般的なGIS(地理情報システム)ソフトで利用できる等高線図、傾斜分布図、CS立体図、立木マップ、オルソ画像など、必要に応じてデータ解析・可視化を行う。クルマの自動運転で道路構造物をリアルタイムに読み取る装置としてLiDARが活用されているが、このLiDARと、機動力のある産業用無人ヘリを組み合わせて森林管理に応用した格好だ。
ヤマハ発動機UMS事業推進部事業開発部の加藤薫部長は「これからも森を守りつつ、ドローンを中心に様々な技術の進化を踏まえ、人々の期待に応え続けます」とコメントしている。