「EV = 環境保護」の建前崩壊? バッテリー原料巡って各地で反対運動 「先祖からの農業つぶすな」の声に責任とれるのか
セルビアでは大規模なデモに発展

鉱山会社が熱い視線を送っていたリチウム埋蔵国のひとつに、セルビアがある。
実は、セルビア西部の小さな村の畑の地下には、約2億tのリチウムの原料となる鉱石が眠っているのだ。ある試算では、毎年
「EV100万台」
のバッテリーを賄え、かつ数十年間採掘できる。
EVの大きな市場であるヨーロッパに隣接しており、採掘を開始したあかつきには、少なくとも年間10億ユーロ(約1400億円)以上の経済効果が得られる。
さらに、バッテリー工場やEVの生産工場が建設されると、経済効果は200億ユーロ(約2.8兆円)にもなる。国を挙げて鉱山会社と手を組み、リチウム鉱山開発プロジェクトを推進しようとするのも無理はない。
案の定、リチウムの採掘に反対する環境保護活動が行われた。抗議活動は何か月にもおよび、かつ何万人もの参加者を抱えた大規模なものへと発展した。
その結果として、2022年1月にセルビア政府はプロジェクトの終了を発表している。
ポルトガルも環境破壊が懸念されている

ポルトガルもリチウム採掘の有力な候補地に挙げられている。
ポルトガル北部には、
「ヨーロッパのリチウム埋蔵量の約10%」
が眠っていると推定されており、ポルトガル政府は露天掘りの鉱山開発プロジェクトを計画している。
しかしながら、リチウム採掘予定地域であるコバス・ド・バローゾは、国連食糧農業機関(FAO)により世界農業遺産に認定されており、ここでも環境保護の問題が持ち上がっている。
プロジェクト反対派の主張を要約するとこうだ。
「ポルトガル政府はリチウム鉱山開発を推進したがっているが、数十年しかもたない鉱山開発のために、代々受け継いできた農業や自然環境、絶滅危惧種を放棄するのか」
と。
環境保護という大義名分を掲げたEVのために自然を破壊し、リチウムの採掘を終えると、荒廃した土地だけが残る。リチウム採掘の例を通して、持続可能な社会とはという問いについて改めて考えさせられる。