「ママチャリ + ヘルメット」は確かにダサい! でも着用「努力義務化」まであと数か月、今こそ正しい道交法を知るときだ
賠償額や保険金に影響?
努力義務規定に違反しても刑事罰に問われることはない。だが、民事裁判において、賠償責任を問われるケースはあり得る。例えば、労務コンプライアンス関係の法令における努力義務項規定では、賠償結果に影響を与える判決が出ている。
5年前、筆者は自転車で信号待ちをしているときに、原付きバイクに追突されたことがあった。このとき、警察は聴取において、筆者がヘルメットをかぶっていたことを確認してきた。筆者が遭遇したような事故のケースはともかく、今後、過失割合が問われるような自転車関与事故においては、自転車利用者がヘルメットをかぶっているかどうかが、過失割合の算定に影響を与える可能性がある。
今回の自転車におけるヘルメット着用努力義務化によって、自転車保険を提供する保険会社各社が、ヘルメットの着用を加入者に強く推奨し、かつ保険金の支払いにおいて影響を与える可能性もあるかもしれない。
通勤時における従業員の自転車利用において、ヘルメットの着用を就業規則に盛り込む企業も登場してくるだろう。これは自宅~オフィス間を自転車通勤するケースだけではなく、最寄りの鉄道駅までのアプローチで自転車を利用するケースも同様である。
国、地方自治体、もしくは業界団体などが、従業員に対して自転車利用時のヘルメット着用を推奨する企業に対し、補助金等を設定することも考えられる。通勤時の事故は労災扱いになり得るが、労災判定における補償金額の審査において、ヘルメット着用の有無が争点になる事例(判例)が現れたら、企業はこぞって従業員のヘルメット着用強制化に動くだろう。
自転車は免許が不要である。老若男女を問わず気軽に利用でき、環境にも優しい移動手段である。だが、こと交通安全の観点から見れば、厄介者になりつつある。
交通事故による死傷者は、長年の交通安全対策が実を結び、減少傾向にある。しかし、高齢者および自転車に関して言えば、死傷者数が下げ止まり傾向にある。つまり、交通安全対策におけるボトルネックが、高齢者と自転車なのだ。
次回は、すべての自転車利用者に対するヘルメットの着用努力義務化に国が踏み切った背景を考えよう。