EV普及は「CO2削減」に繋がらない? 火力発電に頼る日本の特殊事情と、注目すべき新エネの行方とは
世界的なモビリティ電動化の潮流がある一方、日本には諸外国とは異なるエネルギー事情を抱えている。
火力発電に頼る日本の実相

現在、日本のエネルギー状況は、決して潤沢なものではない。特に、原子力発電所の稼働が減少し続けてきたことで、その中心が、燃料の多くを輸入に頼る火力発電に変わっている。
資源エネルギー庁がまとめた資料によると、2017年時点で、日本の発電電力量における各資源の比率は、石油・石炭・天然ガスの合計が80.9%となっている。
2022年はじめに欧州委員会が、原発を「地球温暖化対策に役立つエネルギー源」と位置づけたことを踏まえ、再生エネルギーの比率を見ると、原子力・水力・再エネの比率は19.1%となる。
この比率は、同じく2017年のヨーロッパ各国と比較して、原子力・再エネの割合が圧倒的に低く、日本が火力発電に頼った状況であることは明らかだ。
そのため、今後日本で電動モビリティが普及していったとしても、CO2の排出量の減少幅は、極端に言えば海の水をコップですくい水位が下がったと主張する程度だろう。原子力をはじめとした再エネの技術力強化は、検討すべき重要なファクターと言えるのではないだろうか。
水素が注目される理由とは
それではあらためて、水素が注目される理由とは何か。
電動化に必須のバッテリー製造には、グラファイトなどの影響で大きな環境負荷が伴い、また製造時の電力消費も大きいというデメリットがある。
そのため、環境負荷が危ぶまれる国ではあまり生産されておらず、2021年段階の生産量の内訳は中国や韓国が独走状態だ。日本を含め他の国々は、中国・韓国にバッテリー依存している状態となっている。