なぜEVは中国で爆発的に普及したのか? その背景にあったのは「路線バスの電動化」だった
電気バスの普及促進
中国政府の電気バスの導入政策は、大気汚染が深刻な大都市部からまず適応された。
2009年、都市内交通用バスの電動化について、中央省庁に合同委員会を設置した。そして、この年に初めて電動バスへの補助金が予算化された。しかし技術も当然未熟で、バッテリーの量産化も進んでいなかったため、2010年代に入ってから本格的に生産が始まった。
深セン市は2018年末までに、1万6000台ある路線バスをすべて電気バスに置き換えると発表し、同年末に目標を達成したと宣言した。そのほかの特別市(北京、上海など)についても、中央政府は2020年末までの全台数の電動化を指示して、大半が目標を達したとしている。
電動バス普及のインパクト
2018年末の中国で運行している電気バスは、約42万1000台と推計されている。電気バスは多くの乗客を乗せるため、重量も容積も一般のEVよりかなり大きい。
世界で最も有名な電気バスメーカーの比亜迪(BYD)のラインアップを見ると
1.全長6.2mの小型バス:144kWh
2.全長8.2mの中型バス:215kWh
3.全長10.5mの大型バス:391kWh
となっている。中国の大都市の路線バスはほとんど大型バスのため、1台あたりのバッテリー搭載量は、少なく見積もっても250kWh程度と推察できる。
乗用車のバッテリー容量は当初24kWhが主力で、最近ようやく50kWh台が多くなった。大型電気バスは普通のEVの5~10倍以上のバッテリーを積むので、2018年までに生産された約42万台の電気バスは、EV換算では210~420万台に相当する。
グラフはEVのバッテリー需要を乗用車とバスで比較したものだ。2018年までは中国の電気バスの販売台数が世界の95%以上なので、ほぼ中国の数字と思って間違いない。
これを見る限り、50%を大きく超える補助金で大量に生産された電気バスへのバッテリー需要が、中国のバッテリー生産への大規模投資を後押しており、ひいてはEV産業の基礎を作ったことがわかる。