「物価高倒産」が前年比8割増 業種別では「運輸業」最多、燃料高の影響で
2022年は累計116件 8月にも年間最多更新へ

帝国データバンク(東京都港区)は8月8日、「物価高倒産」に関する調査結果を発表した。
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法的整理(倒産)となった企業のうち、原油や燃料、原材料などの「仕入れ価格上昇」、取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかった「値上げ難」などにより、収益が維持できずに倒産した企業を物価高倒産と定義し、集計分析を行った。
原油や燃料、原材料などの「仕入れ価格上昇」、取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかった「値上げ難」などにより、収益が維持できずに倒産した物価高倒産が急増している。
調査開始の2018年1月から2022年7月までに判明した物価高倒産は、累計558件。2022年は1~7月で116件に達し、過去5年で最多となった2021年(138件)を大幅に上回るペース。7月は単月で最多の31件判明し、前年同月(17件)を82.4%上回るなど、早ければ8月にも年間最多件数を更新する可能性が高い。
2022年の116件を業種別に見ると、燃料高の影響が大きい「運輸業」(33件)がトップで、全体の約3割を占めた。以下、木材・資材高の余波を受けた「建設業」(27件)、「卸売業」(18件)の順。なお、物価高倒産の約8割が負債5億円未満の中小企業が占める。
中小零細を中心に倒産さらに増える恐れ

業種詳細別にみると、「運輸業」(33件)がトップとなり、次いで「総合工事」(16件)。このほか、小麦や油脂の世界的な価格上昇の影響が大きい「飲食料品製造」(11件)、「飲食料品卸売」(9件)、「飲食料品小売」(6件)が続いた。英国で著名なチョコレートブランドの日本法人で、物価高や輸送費高騰などが追い打ちとなり法的整理に至った「ホテルショコラ」(東京都、負債51億4000万円、7月28日民事再生法申請)をはじめ、「食品」関連が26件に達した。
燃料、原材料、物流コストの高騰を受け、中小企業を取り巻く事業環境は悪化の一途をたどっている。他方、物価高による値上げを消費者や事業者は許容しておらず、価格転嫁も最小限に抑える企業が少なくない。
経済産業省は『物価高における流通業のあり方検討会』を立ち上げ、8月3日に第2回の検討会を開催するなど、物価高の影響は現状倒産が目立つ「運輸」「建設」にとどまらない。倒産には至らないまでも、確実に中小・零細企業の体力を奪っており、今後は「卸売」や「小売」で物価高倒産がさらに増加するおそれもある。
2022年7月の企業倒産は、コロナ禍で初めて3か月連続の増加となった。“ウッドショック”と呼ばれる木材や資材高を受けた「建設業」のほか、燃料費の高止まりが続く「運輸業」を中心に、ここに来てコロナ禍前半の減少基調からの“底打ち感”が鮮明となっている。
この間、原油や燃料、原材料等の「物価高」の影響を受けた倒産が相次いでいる。小麦や油脂のほか、原油高による物流費や包装資材、電気料金などの価格高騰が企業収益を圧迫し続けている。価格転嫁が難しい中小・零細企業を中心に、物価高倒産がさらに増えるおそれがある。