なぜ世界は「昭和の日本車」に熱狂するのか? 市場は約9600億円へ、“中古車”が資産に変わる瞬間
1980~1990年代の国産車が、いま世界で資産へと変貌している。中古100万円台だった車両が1000万円超で落札され、市場規模は2033年に61億ドルへ拡大。JDM熱は観光や部品供給まで波及し、日本発の“文化経済圏”を形成しつつある。
「国内向け」から「世界文化」への変貌

「JDM(Japanese domestic market)」という言葉が、日本の街角でも当たり前のように聞かれるようになった。本来は国内市場向けに作られた車を指す言葉だが、今では米国や英国の若者たちが独自の感性で日本車を愛でる、巨大な文化圏を指す記号へと姿を変えている。この熱狂は海を越えて日本へ逆輸入され、かつては「型落ちの中古車」に過ぎなかった車両へのまなざしを、根本から変えてしまった。
1980年代から90年代。トヨタのスープラや日産のスカイラインGT-Rといった名車が日本の道を走っていた頃、それらが数十年後に世界の宝になるとは誰も想像していなかっただろう。映画『ワイルド・スピード』やアニメ、漫画が世界中に届けられたことで、日本のスポーツカーは移動の道具だけではなく、
「物語を背負った収集品」
になった。特に米国の「25年ルール」による輸入規制の緩和は、眠っていた国産車たちが海を渡る大きなきっかけとなった。
製造から20年以上が経った車が、今や海外のコレクターたちの間で、投資に近いほど強い需要を呼んでいる。メディアで脚光を浴びた車種は、中古車輸出という言葉では片付けられないほどの価値を持ち、修理や改造、部品市場にまで大きな経済効果を及ぼしている。
米国で20周年を迎えた「Japan Classic Car Show」というイベントの賑わいを見れば、日本で姿を消しつつある名車たちが、海外で資産としての第二の人生を謳歌していることは明らかだ。取引価格が当時の新車価格を軽々と上回る現状は、JDMが物理的な製品であることをやめ、希少な代替資産へと変質したことを物語っている。