なぜ世界は「昭和の日本車」に熱狂するのか? 市場は約9600億円へ、“中古車”が資産に変わる瞬間
高まる資産価値と深刻化する盗難の影

1980年代から1990年代にかけて世に出た国産スポーツカーの価値が、今や天井知らずの勢いで跳ね上がっている。かつての日産スカイラインR32 GT-Rを振り返れば、新車価格は400万円から500万円台。海外への輸出が本格的になる前の中古市場では、100万円から200万円程度で手に入る時期さえあった。ところが今の光景はまるで別物だ。当時の販売価格の倍以上に達する個体も珍しくない。実際、米国の大手オークションでは8万2500ドル、当時のレートで約1000万円という高値で落札された例もある。
映画の影響を強く受けたトヨタ80スープラの高騰ぶりはさらに凄まじい。1000万円から2000万円という、かつての常識では測れない価格で取引される事例も出ている。この熱狂は国内の買取現場を過熱させ、以前なら考えられなかったような査定額を出す業者が増えた。少々状態が悪くても、あるいは走行距離が伸びていても、人気車種であればすぐに買い手がつく。
HTF Market Insightsの調査によれば、JDM全体の市場規模は2025年の34億ドルから、2033年には61億ドル(約9600億円)にまで膨らむ見通しだという。この数字は、日本の旧車が移動の手段であることをやめ、価値が落ちにくい資産としての顔を持つようになったことを示している。
しかし、取引価格が上がるほど、車両の盗難が激しくなるという暗い側面も浮き彫りになった。国内で盗まれた車がそのまま、あるいはバラバラに解体されて不正に国外へ持ち出される事件は、もはや見過ごせない問題だ。2022年に埼玉県で起きたマツダRX-7の盗難事件では、持ち主が積んでいたGPSが位置を割り出し、輸出される直前で犯人の逮捕にこぎつけた。
だが、こうした幸運な例は少ない。盗まれた車は数日も経たずに解体されるケースがほとんどで、見つけ出せるかは時間との戦いになる。犯罪の裏には、日本と海外の間に生まれた巨大な価格の差を不当に手に入れようとする、闇の論理が透けて見える。持ち主には、ハンドルロックなどの備えはもちろん、追跡できる仕組みを整えるといった、これまで以上の警戒が突きつけられている。