なぜ世界は「昭和の日本車」に熱狂するのか? 市場は約9600億円へ、“中古車”が資産に変わる瞬間
1980~1990年代の国産車が、いま世界で資産へと変貌している。中古100万円台だった車両が1000万円超で落札され、市場規模は2033年に61億ドルへ拡大。JDM熱は観光や部品供給まで波及し、日本発の“文化経済圏”を形成しつつある。
メーカーが主導する歴史の継承と部品復刻

海外で育まれたJDMという熱狂は、ここ数年、逆輸入される形で日本の地にも広がりを見せている。象徴的なのは、最大手のトヨタが半年間に及ぶ催しを開いたことだろう。2025年11月から2026年4月にかけて、トヨタ博物館には自社製品の枠を超え、他メーカーの名車も一堂に会した。
オーナーたちの交流や、実際に動く姿を披露する行事の盛況ぶりを見れば、かつての製品が今のブランド価値を支える力強い柱になっていることがよくわかる。メーカーが競合他社の車両まで並べるという異例の動きは、日本車全体の歴史を守り、欧州の高級ブランドが独占してきたクラシックカー市場に対抗しようとする意志の表れといえる。
こうした流れをさらに後押ししているのが、トヨタや日産による純正部品の復刻だ。トヨタの「GRヘリテージパーツ」による80スープラやAE86の大型部品の製造、日産の「NISMOヘリテージパーツ」による歴代スカイラインへの部品供給は、単に持ち主を助ける以上の意味を持っている。複雑なエンジン部品をわざわざ新造するのは、メーカー自らが過去の製品の質を保証し、ブランドが続くことを証明する営みにほかならない。
こうした取り組みは、中古市場での価値を安定させ、今売っている車の信頼さえも高める高度な経営判断に基づいている。メーカーが自ら動くことで、一台の車が長く走り続けることが可能になり、日本車が世界の産業遺産として残るための土台が固まっていく。海外発の熱狂が国内メーカーの姿勢を動かし、ブランドを守るための好循環を生み出している。