日本の「無人サービス体験」が生むストレスフリーな観光価値【連載】平和ボケ観光論(9)

キーワード :
,
インバウンドの93.7%が利用し9割超が満足――自販機やセルフレジに象徴される無人サービスは、日本の治安と倫理観を背景に「人がいない安心」という新たな観光価値を創出した。省人化は効率化を超え、旅の質を底上げする競争力となりつつある。

都会の喧騒に浮かぶ没頭のための聖域

外国人が見た日本のイメージ(画像:Pexels)
外国人が見た日本のイメージ(画像:Pexels)

 渋谷や秋葉原といった繁華街での遊びはインバウンドの間でも定番だが、なかでもゲームセンターは実質的に人が介在しない娯楽空間として親しまれている。特に秋葉原の店舗はクレーンゲームを中心に絶大な支持を得ており、「GiGO秋葉原3号館」では客の約8割を外国人が占めるほどの賑わいだ。日本アミューズメント産業協会の調べでは、クレーンゲームの国内市場規模は2013(平成25)年の約1900億円から、2023年には約3600億円へとこの10年で倍近くに膨らんだ。この伸びは、インバウンドの増加とわかちがたく結びついている。

 喧騒のなかにありながら、対面でのやり取りを必要としないゲームセンターは、旅行者が自分のペースを保てる貴重な場となっている。言葉や文化の違いを気にすることなく、自らの腕前ひとつで結果が出る遊びに没頭できる時間は、いわば「動的な聖域」ともいえる役割を担っているのではないか。

 また、街なかには無人のマッサージ施設も姿を現している。都内を中心に広がる「ちょこま」では、最新のマッサージチェアを取り入れ、キャッシュレス決済を整えることで外国人でも使いやすい環境を作った。運営元の日本メディック(神奈川県藤沢市)によれば、観光地に近い店ほど旅行者の姿が目立つという。

 疲れ切った体を休める際、誰とも話さず機械に身を委ねられる空間は、一種の避難所のような安らぎを与えてくれる。周囲を過剰に警戒せずとも過ごせる日本だからこそ、こうした心休まるひとときが成立している。

全てのコメントを見る