宇宙が“制御不能”に近づく日――衛星1万基時代、なぜ衝突リスクは急増しているのか?

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人工衛星は10年で1000基から1万基超へ急増し、10万基時代も視野に入る。過密化する軌道空間では衝突リスクが常態化し、宇宙交通管理(STM)の整備が不可避となっている。デブリ100万個が漂う中、宇宙は新たなインフラ設計の局面に入った。

STMと障壁

宇宙状況認識とSTMの違いの整理(画像:日本宇宙フォーラム)
宇宙状況認識とSTMの違いの整理(画像:日本宇宙フォーラム)

 人工衛星がひしめき合う宇宙で、今もっとも注目されているのがSTMという考え方だ。それぞれの衛星がどこにいるのか、情報を出し合い、衝突の恐れがあれば軌道を変えて避ける。理屈は明快だが、空の便をさばく航空管制のような、誰もが従う仕組みはまだ出来上がっていない。

 今はまだ、地上からのレーダーや望遠鏡で得たデータをもとに、各事業者がそれぞれに「ぶつかりそうか」を判断しているのが実情だ。しかし、見ているデータも判断の基準もバラバラでは、いざという時の調整は一筋縄ではいかない。ましてや数千基が群れをなすコンステレーションの時代、人間がひとつひとつ判断を下すやり方は、そろそろ限界を迎えつつある。

 こうした課題に対し、AIに軌道の解析を任せたり、自動で回避させたりする技術の研究が急ピッチで進んでいる。国と民間が手を取り、世界共通のプラットフォームで情報を分かち合おうという議論も始まった。だが、現実はそう甘くない。国防上の機密や企業の利益が壁となり、手の内をすべて明かすまでには至っていない。

 一方で、航空機の発着枠のように、宇宙にも軌道の利用枠を設けるべきだという声も上がり始めた。厳しすぎるルールは産業の芽を摘みかねないが、無制限に打ち上げを許せば、混雑はひどくなる一方だ。利便性と安全の天秤をどう取るのか。宇宙の秩序をめぐる議論は、まだ出口が見えていない。

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