「トヨタが出るなら話は別だ」 最大手の本気が“EV嫌い”の心理を動かす? シェア1%でも市場が雪崩を打つ瞬間の正体
巨額投資の意味

世界的にEV需要が急増したのは2020年以降のことだ。販売台数は2020年に200万台を超え、翌年には500万台に迫り、2023年には1000万台を突破した。産業全体で電動化へのシフトが鮮明になるなか、慎重な姿勢だったトヨタは2021年12月に戦略を転換した。
2030年までに30種類の新型モデルを投入し、EVの年間生産目標を従来の200万台から350万台へと大幅に引き上げた。それから4年が経過した現在、世界のEV需要の伸びは鈍化し、トヨタの販売実績も40万台余りにとどまっている。
だが戦略は後退するどころか勢いを増している。2025年10月に投入した「bZ4X」の改良モデルは、発売からわずか4か月で累計販売台数が5000台を超え、好調な滑り出しを見せた。
投資の規模も圧倒的だ。米国では2030年までに最大100億ドル(約1.5兆円)を追加し、電池工場や車両生産の体制を整える。中国ではレクサスの新工場を上海に建設し、2027年から年間10万台を生産する計画だ。国内でも愛知県豊田市に14年ぶりとなる車両工場を新設し、2030年代初頭の稼働を目指している。
2025年10月には住友金属鉱山と全固体電池の材料量産に向けた共同開発契約を結んだ。2027年から2028年の実用化により、航続距離の延長や充電時間の短縮を高いレベルで実現する。
トヨタがこれほど多額の資金を動かし始めた事実は、取引先である数万社の部品メーカーに対して、EVへの対応が生き残るための絶対条件であることを通告したに等しい。国内シェアの3割を握る最大手が不退転の決意で動く姿は、周辺企業が抱いていた投資への迷いを一掃し、日本の産業基盤を強制的にEVへと適合させる流れを生む。
産業を支える中心が動いたことで、これまで日本で主流だった
「EVは時期尚早」
という空気は打ち消された。この巨額投資は市場に合流の許可を与えたも同然であり、日本市場は本格的なEVシフトへと引き込まれていくだろう。