「白タク」事故を起こしても不起訴――「違法という認識なし」インバウンド4000万人時代で拡大、法の想定外に置かれた無許可送迎とは
法の網をすり抜ける構造への向き合い方

現行の法律の枠内だけで、この不透明な経済圏を解消しようとすれば、いずれ行き詰まる。予約や決済がアプリのなかで完結する以上、そこに残るデジタル上の記録を、証拠として扱えるようにしなければならない。
オンラインの履歴を法的に位置づけるための手当ては、もはや後回しにできない段階に来ている。同時に、車両の没収を含む踏み込んだ行政処分を行い、違法営業を続けることで得られる利得そのものを断ち切る実効性が問われる。
もっとも、規制を強めることだけで状況が改善するわけでもない。外国人旅行者の移動需要が確かに存在する以上、それを適法な枠のなかでどう受け止めるかが避けて通れない。正規のタクシーや配車サービスにおける多言語対応をさらに進め、利用者が迷わず正しい選択をできる環境を整えることは、結果として違法行為を抑える力になる。
2024年3月に自動車運送業が「特定技能」の対象に加わった流れを生かし、働く側にとっても、見通しの立つ正規の就業ルートを選びやすくする工夫が欠かせない。
さらに、外国人を受け入れる企業や教育機関の関与も軽視できない。日本の法制度について十分な情報が伝わらないまま、不法就労に踏み込んでしまう例を防ぐ取り組みが必要になる。違反行為が在留資格の喪失につながり、その後の人生に大きな影響を及ぼすことを正確に伝え、一時的な収入に引き寄せられない意識を育てていくことが求められる。
白タクの問題は、交通の秩序が乱れるという話にとどまらない。日本が長年積み重ねてきた法治の安定や、安全に対する信頼そのものを揺るがす事案である。2025年に起きた事故が示した教訓を、記憶の奥に押しやってはならない。デジタルと現実の間に生じた法の抜け穴を放置したままでは、観光立国を掲げる日本の足場は、不安定さを抱え続けることになる。