「白タク」事故を起こしても不起訴――「違法という認識なし」インバウンド4000万人時代で拡大、法の想定外に置かれた無許可送迎とは

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インバウンドが年間4270万人に達し、観光は過去最高水準に戻った。一方で移動の供給不足を突く白タクが拡大し、事故や税の空白が顕在化する。2030年6000万人時代、日本の足元で何が起きているのか。

デジタル化で姿を変えた違法送迎

「小紅書(RED)」(画像:行吟信息科技)
「小紅書(RED)」(画像:行吟信息科技)

 現在の白タクは、かつて想像されていた違法営業の姿とは大きく様変わりしている。駅前で客に声をかけるような場面は、ほとんど見かけなくなった。集客や決済の中心は、SNSや海外製の専用アプリに移っている。

 中国語圏の利用者が多いSNS「小紅書(RED)」は、その代表的な窓口だ。予約から支払いまでがオンラインで完結するため、取引の中身は外から見えにくい。こうしたデジタル化された仕組みが、違法な送迎を追いにくくしている。

 その背後では、仲介役の存在も浮かび上がる。ドライバーがそれぞれ独立して動いているというより、緩やかなつながりを持つ集まりとして動いている例が少なくない。やり取りはデジタル空間に集約され、外部から全体像をつかむのは難しい。利用者はアプリ内の評価やクチコミを頼りに車を選ぶが、それは日本の法制度に裏打ちされたものではない。閉じた範囲のなかで通用する信頼が、現実の安全を保証するわけではなかった。

 その危うさが、はっきりとした被害として現れたのが、2025年6月の事故である。山梨県の富士スバルラインで、パキスタン国籍の男が運転するワゴン車が大型バスと正面衝突し、米国人観光客ら五人が重軽傷を負った。車両には、以前から白タク営業の疑いが持たれていた。

 安全管理が十分に行われないまま続けられた営業が、国際的な観光地で深刻な事故につながった。移動の供給が追いつかないという事情があったとしても、ルールの外で積み重ねられた行為が招いた結果は重い。利用者が感じていた安心感とは裏腹に、その安全がどこにも担保されていなかった現実を、この事故は突きつけている。

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