「白タク」事故を起こしても不起訴――「違法という認識なし」インバウンド4000万人時代で拡大、法の想定外に置かれた無許可送迎とは

キーワード :
,
インバウンドが年間4270万人に達し、観光は過去最高水準に戻った。一方で移動の供給不足を突く白タクが拡大し、事故や税の空白が顕在化する。2030年6000万人時代、日本の足元で何が起きているのか。

事故が起きて初めて見える脆さ

正規サービスと違法白タクの比較一覧(画像:清水秀明)
正規サービスと違法白タクの比較一覧(画像:清水秀明)

 白タクを巡る問題でとりわけ深刻なのは、事故が起きた際に被害者を守る仕組みが十分に働かないことと、違法営業である事実を司法の場で立証しきれない現実にある。正規の事業者は、二種免許の取得に始まり、厳しい運行管理、高額な事業用保険への加入を義務付けられてきた。こうした積み重ねが、乗客の安全や補償を支えている。

 一方、それらの負担を負わない白タクが事故を起こした場合、補償がどうなるのかは見通せない。責任の所在がはっきりしないまま、被害者側が重い負担を背負わされる構図は、日本の交通社会が長く築いてきた信頼を根本から揺さぶる。

 2025年に起きた事故で、不起訴とされた理由が「嫌疑不十分」であったことは、法の執行が抱える限界をはっきり示した。現場で現金の受け渡しが確認されず、支払いがデジタル上の記録だけで完結していたため、営業行為そのものを証明するのが難しかった。

 ドライバーが「報酬の約束はあったが、違法だという認識はなかった」と述べ、それを否定する材料を示せない現状は、警察や正規事業者にとって重い問題である。重大な事故が発生しても、法的な責任を問えない余地が残されていることが、この事例によって露わになった。

 事態をさらにややこしくしているのが、2024年4月から運用が始まった日本版ライドシェアの存在だ。悪質な業者は、同じ白ナンバーの車両である点を利用し、「これは合法のライドシェアだ」と利用者に説明して、取り締まりをかわす例を繰り返している。乗客とドライバーが事前に話を合わせている場合もあり、現場での確認は一段と難しくなる。

 その結果、違法な送迎が適法なサービスの陰に紛れ込み、法の目が届きにくい場所で広がり続けているのだ。

全てのコメントを見る