海外で普及する「キャップレス給油口」、果たして日本で根付くのか? その障壁とは何か
セルフ給油が一般化する日本市場で、キャップレス給油口の普及は限定的だ。北米・欧州では年率4~7%成長、2033年には23億ドル市場に達する見込みで、利便性とVOC削減効果が注目される。
継ぎ足し給油の制約
キャップレス給油口は利便性や環境性能で優れるにもかかわらず、日本国内での採用は限定的だ。この背景には、日本特有の給油習慣が影響している。
最大の要因は「ギリギリまで満タンにしたい」というユーザーのニーズにある。従来のキャップ式給油口では、給油機が自動停止した後もパイプ内を目視しながら少しずつ継ぎ足すことができた。フルサービスのガソリンスタンドでは、スタッフが給油レバーを微調整し、隙間なく満タンにする光景も見られる。
一方、キャップレス給油口ではこの継ぎ足しが構造上難しい。給油口内部にフラップがあるため、中の様子がほとんど見えない。ノズルを少し引いて継ぎ足そうとすると、フラップの外側に給油されて燃料が溢れるリスクが高まる。
実際、ネット上でも
「継ぎ足し給油すると溢れる」
との声がある。キャップレス給油口を採用する車両の給油口カバー裏には注意書きシールが貼られ、自動停止後の継ぎ足しを控えるよう促している。
合理的に考えれば継ぎ足し給油のメリットは限定的だ。しかし、長年の習慣として根付いているため、日本人にとっては心理的抵抗が大きいと考えられる。