「クマ被害」過去最多12人死亡! 通勤・通学ルートにも迫る都市近郊リスクーー「移動防衛網」は今から間に合うのか?

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2025年秋、都市近郊でクマ出没が過去最多の12人死者を記録。森林資源減少と情報活用不足が生む“複合災害”は、移動データと広域監視による新たな防衛インフラ構築の緊急性を示す。

“山の再編”という発想

 クマの出没を「山から降りてきた異常な振る舞い」と片づける時代ではない。問題の本質は、山が機能不全に陥っている点にある。林業の衰退、手入れされない人工林の増加、気候変動による餌資源の枯渇──これらが積み重なった結果、野生動物の行動圏が変質し、人と獣の境界そのものが崩れ始めている。つまり、捕獲数や警戒体制を強化するだけでは限界がある。山という空間そのものをどう扱うかが問われている。

 必要なのは「元に戻す」発想ではなく、山を別の形で使い直す視点だ。鍵となるのは、里山の再利用と交通の結節を組み合わせることだろう。森林資源をエネルギーや観光資源として循環させつつ、林道やアクセス道路を、人が継続的に出入りできるルートとして再配置する。人の往来が生まれれば、野生動物は自然と奥地へ戻る傾向があり、結果的に出没リスクは下がる。

 たとえば、林道を地域輸送や観光ルートに組み込む。電動バギーや小型EVが定期巡回する仕組みを整え、センサーやAIを活用して植生や動物の行動データを収集すれば、林業・環境保全・地域交通が一体化した新たな山の管理モデルが成立する。地域経済への波及効果も期待できるが、土地利用や合意形成といった政治的要素も避けて通れない。

 山の未来を考えるとは、人と自然が共存する前提を作り直すことだ。放置された山を再びアクセス可能な空間に変え、地域の移動環境とつないで再構築していくことで、人命を守りながら生態系の循環を取り戻す。そのアプローチこそが、持続可能な野生動物対策の核心になる。

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