EVシフトで揺れる「金型産業」 下請構造と高齢化が招く消えゆく技術――再生の可能性はあるのか?
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日本製造業の基盤を支える金型産業が危機に直面している。2025年1~9月期だけで126件が倒産・廃業。下請構造や人材高齢化、海外内製化の影響により、国内産業の競争力は低下し、再生には設計段階からの連携と新たな産業構造の構築が不可欠である。
協働設計型への転換

政府は「中小企業生産性革命推進事業」などを通じて設備投資補助金を実施しているが、実効性は限定的だ。補助対象の審査に時間がかかり、交付まで半年以上かかるケースも多い。資金繰りに余裕のない零細事業者にはその間の運転資金を賄えず、制度の前に倒産する例もある。さらに、補助対象の多くがデジタル化投資や自動化機器であり、
・職人の技能継承
・後継者育成
への直接的支援は乏しい。制度設計自体が“中規模企業向け”に偏っており、現場実態との乖離が続いている。
とはいえ、再生の可能性は残されている。国内でも、複数の金型企業が共同で設備投資を行い、試作から量産まで一貫対応する「共同受注体制」によって生き残りを図る動きが出ている。
また、新しい市場では高精度金型の需要が堅調だ。これらの分野は少量多品種で、試作段階からの密接な連携が求められるため、大量生産型の海外メーカーよりも国内企業の俊敏さが評価されている。金型産業を単なる下請ではなく、
「設計・開発の一翼」
として再定義する必要がある。部品メーカーや完成車メーカーの開発初期段階から金型設計者が関与し、製造性・耐久性・コストの最適解を提案できる体制をつくること。設計データや加工ノウハウを共有するプラットフォームを構築し、デジタル設計技術を中心に競争力を再構築すべきだ。
欧州では、ツールメーカー連合がこの仕組みを構築し、金型産業の収益率を回復させている。日本でも、産業構造を“請負型”から“協働設計型”へ転換できるかが、今後の命運を分ける。