9000億円の再開発は誰のため? 築地プロジェクトが抱える「70年固定」という呪縛――「計画ありき」で失われる都市の“余白”とは

キーワード :
, ,
築地市場跡地の再開発は総事業費9000億円、工期12年の大規模計画だ。用途が70年間固定されるため、変化する都市ニーズに対応しづらく、土地が「負の資産」となるリスクを孕む。建設費高騰や人手不足も不確実性を高め、未来志向のスローガンが本質を覆い隠すなか、都心更新の真価が問われている。

空地の戦略的価値と再生力

築地地区まちづくり事業(画像:東京都)
築地地区まちづくり事業(画像:東京都)

 この再開発は、東京の中心にある自由に使える土地が、将来の変化に対応できる可能性を制度や空間の面で閉じてしまっている。用途や機能があらかじめ決まっていて、変更が難しいまま70年間使われるため、その場所は一度も変わらない前提で残ることになる。

 こうした再開発への批判は根強い。都市にとって最も大切な資源である土地を固定し、多様なニーズの変化に柔軟に対応できない仕組みは、都市の発展を妨げる。長い間用途が固定された空間は、新しい産業や生活の変化に合わせた再編成を邪魔する。

 土地が固定されると、そこでの交通の流れや人の動き、時間の使い方も変えられなくなる。やがて都市全体の変化にも悪い影響を与える。計画を変えられない場所は、次の世代にとって選択肢が少ない

「負の資産」

になるかもしれない。

 一方で、空いている場所が持つ意味は都市の持続可能性にとって非常に重要だ。空間の一部をあえて使わずに残すことは、都市の柔軟さや変化への適応力を高める価値がある。未使用の空地は、将来のニーズの変化や新しい技術の登場に対応できる「余白」として働き、都市の再生力を支える基盤になる。

 都市計画でよく使われる「文化」「交流」「次世代」といった言葉は、多くの場合、具体的な仕組みや空間の設計につながっていない。こうした理想が先行すると、実際にそこで暮らす人たちが必要としているものとはずれてしまう。

 人々が本当に求めているのは、毎日の生活で選べる余地だ。使い方や形があらかじめ決められ、すべての機能が詰め込まれた場所は、時間がたつにつれて変えることができない重荷になる。

 未来の都市には、理想の姿を固定するのではなく、計画自体が変わることを前提にした考え方が必要だ。いったん何も建てずに空けておく空間、「余白」こそ、都市が長く動き続けるために大切な場合がある。

 現在の都市政策が十分に認めていないのは、この「使わないことの価値」かもしれない。建物や機能でいっぱいの都市では、空いている場所こそが意味をもち、都市の持続性を支えているのだ。

全てのコメントを見る