9000億円の再開発は誰のため? 築地プロジェクトが抱える「70年固定」という呪縛――「計画ありき」で失われる都市の“余白”とは
築地市場跡地の再開発は総事業費9000億円、工期12年の大規模計画だ。用途が70年間固定されるため、変化する都市ニーズに対応しづらく、土地が「負の資産」となるリスクを孕む。建設費高騰や人手不足も不確実性を高め、未来志向のスローガンが本質を覆い隠すなか、都心更新の真価が問われている。
MICE競争激化の新潮流
今回の再開発で東京都が掲げるコンセプトは、
「水と緑に囲まれ、世界中から多様な人々を出迎え、交流により、新しい文化を創造・発信する拠点」
である。これに基づき、5万人規模のコンサート・スポーツ施設やMICE棟、ホテル、タワーマンションを建設する計画だ。さらに、歩車分離のデッキ整備や空飛ぶクルマの発着場、次世代モビリティのターミナルも予定されている。
しかし、本当にコンセプト通りの施設になるのか。筆者(昼間たかし、ルポライター)がまず懸念するのはMICE棟である。
都内にはすでに東京ビッグサイト、有明アリーナ、丸の内・品川・日本橋エリアの企業向けMICE施設が稼働している。展示会や国際会議は2023年にほぼコロナ前の水準に回復したが、ハイブリッド化や小規模分散化も進んでいる。さらに、MICE事業はシンガポールや香港、韓国などアジア各国との激しい国際競争の渦中にある。こうした状況下で、築地の新たなMICE施設が既存の都内施設や海外の競合に対して、どのような独自性を打ち出し、国際的な集客につなげるのか疑問が残る。
また、空飛ぶクルマは現段階で実用化や需要規模が不透明な技術にすぎない。2030年代になっても、航空法が改正され、都心で定期的な運行が可能な制度が導入されるとは考えにくい。
このように計画全体が明確なビジョンを欠き、未来的なキーワードを並べただけの象徴的なインフラの寄せ集めに見える。そのため、この再開発の特徴や差別化が見えてこないのだ。