なぜマツダは「世界のデザイン賞2冠」を獲れたのか? 日本人の美意識に立ち返れ! フォード支配下の危機を救った逆転発想とは

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経営危機を乗り越えたマツダは、魂動デザインを武器に世界2冠を達成。市場に迎合せず、理念から逆算する設計思想が、製造業の常識を覆した。地方中堅メーカーの挑戦が、日本の産業構造と価値創造の未来を照らす。

「逆転発想」が築いた独自戦略

マツダ・MAZDA3(画像:マツダ)
マツダ・MAZDA3(画像:マツダ)

 マーケティング部門ではなく、前田育男氏率いるデザイン本部がブランド戦略を担う体制は、自動車業界では異例である。一般的に自動車のデザインは、市場トレンドや消費者嗜好を踏まえて構築されることが多い。しかしマツダは、デザインを先行させ、市場の反応を“あとづけ”する手法にこだわってきた。この逆転の発想が、ブランド価値の確立につながった。

 ビジョンモデル「靭」は、魂動の世界観を具現化したコンセプトカーである。マツダ車に共通するデザイン要素を先行して示し、魂動とは何かを市場に印象づける役割を果たした。

 こうした取り組みが投げかける問いは、製品が本質的に持つ「価値」とは何かという点にある。それはスペックや機能ではなく、言葉で語り尽くせない空気感のようなものである。

 マツダブランドには文化と歴史が宿る。過去の代表的モデルを振り返ると、それぞれが“作り手の哲学”を凝縮した存在であることがわかる。

 2019年に発売されたMAZDA3は、国内で「アクセラ」と呼ばれていたモデルの後継車である。MAZDA3は、量産化を前提に「靭」のデザインを継承した次世代商品群の第一弾となった。この車をきっかけに、魂動デザインの深化が社内外にアピールされ、魂動とは何かを具体的に語る風土が醸成された。

 以降、マツダは世界各国のモーターショーで出品車のデザイン性を高く評価されている。「静止していても動きを感じさせるデザイン」と称され、特に日本の伝統美を体現した造形が多くの共感を集めた。

 このデザイン主導の成功体験は、マツダの組織内に連鎖反応をもたらした。部署間の協働体制が深化し、デザインを起点としたものづくり文化が社内に根付く契機となった。

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