コロナ・戦争・政治に包囲された「輸送用機械産業」 四半期決算で回復できるのか?
増収計画の「運輸」「輸送用機械」
続いて、3月短観の売上高計画を基に「運輸・郵便」と「輸送用機械」の売上高計画を分析してみたい。表は2021・2022年度の業種別売上高計画の前年比をまとめたものである。
結果を見ると、2022年度は全体で増収計画となる中で、「運輸・郵便」がプラス0.8%の増収計画となっている。一方、輸送用機械は「自動車」が同プラス1.4%、「自動車以外」が同プラス2.3%の増収計画となっている。
まず「運輸・郵便」では、「対個人サービス」でも増収計画となっていることからしても、今期は新型コロナに対する経口薬の普及やGoTo再開などが進み、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かうことが想定されている可能性がある。
一方、「輸送用機械」では、製造業全体よりも売上高計画の伸び率が低くなっているが、この背景には
・海外経済の回復
・コロナに伴うデジタル化の加速などによる世界的な半導体不足
などにより、生産現場におけるボトルネックが引き続き警戒されていることが推察される。
従って、2022年度の業績見通しにおいては、こうした半導体をはじめとした部品不足がどの程度長引くかがが注目されよう。
増益計画は「輸送用機械」のみ
続いて、3月短観の経常利益計画から「運輸・郵便」「輸送用機械」の状況を見てみよう。
結果を見ると、全産業では原材料コストの上昇などを背景に製造業を中心に減益計画となっている。こうした中、年後半以降に半導体不足解消が期待される「輸送用機械」は増益計画となっており、特に自動車以外の「その他輸送用機械」はプラス8.8%と大幅増益計画となっている。
一方、大幅減益計画となっている「運輸・郵便」については、移動や接触を伴う経済活動正常化期待で増収計画になっているものの、燃料費の高騰に伴うコスト増を見込んでいる可能性がある。
このように、今期の経常利益見通しで増益が期待されるモビリティー関連業種としては、輸送用機械をはじめとした半導体不足解消期待を受けた加工組み立て製造関連などが指摘できる一方で、運輸関連業種は燃料費高騰のコスト増を受けて減益に転じることが警戒される。