「天井を走れる」EV誕生? アクション映画が現実に?──F1超えのダウンフォース制御が拓く未来の走行革命とは

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F1都市伝説「車は天井を走れる」は、ついに現実となった。英マクマートリー製EV「スピアリング」が自走で逆さ走行を達成。最大2000kgのダウンフォースを生む革新技術と、量産100台限定の戦略が、スポーツカー市場に波紋を広げる。

ファンカー技術の発展性

管路調査用ドローン 天井走行(画像:雲田商会)
管路調査用ドローン 天井走行(画像:雲田商会)

 マクマートリー・スピアリングの中核技術である「ダウンフォース・オン・デマンド」システムには、多くの利点がある。スポーツカーの走行性能を大きく高めるだけでなく、新たな応用にもつながる可能性を秘めている。

 このシステムは、車体やウイングの空力性能に依存せずにダウンフォースを発生できる。そのため、車両設計における自由度が大きく向上する。さらに、走行中にウイングが生む空気抵抗も抑えられるため、総合的な走行性能の向上につながる。

 ファンカー技術には、まだ開発の余地がある。実際、マクマートリー以外にも開発の動きが出ている。F1時代にファンカーを設計したエンジニア、ゴードン・マレーが立ち上げた小規模メーカーもその一例だ。同社は2022年ごろから、ファンを搭載したスポーツカー「T.50」を少数生産している。

 日常使用の乗用車にとっては、スピアリングのような極端な走行性能は不要だ。ただし、ファンによる安定性向上といった技術は実用化が可能である。小型のファンでも効果は十分で、騒音を抑えつつ、走行安定性を高めたり、横転リスクを軽減したりできる。空力パーツでは効果の出にくい低速域でも機能する点も強みだ。

 この技術は、自動車以外の分野にも波及し始めている。たとえば、天井走行技術は下水道点検用ドローンにも応用されている。狭い管内では飛行型ドローンの操縦が難しいが、ファンで天井や壁に押し付けて走行させることで、安定した点検が可能になる。

 2025年1月、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、老朽化した下水道管が原因だった。こうしたインフラ事故を未然に防ぐには、点検技術の高度化が欠かせない。天井走行型ドローンのような技術は、いまこそ求められている。

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