「キング・オブ・ミニバン」再臨! 日産新型エルグランド、15年目の逆襲なるか? 新型e-POWER搭載、トヨタ一強に風穴を開ける秘策とは
エルグランドの歴史と顧客流出

少しエルグランドの歴史を振り返っておきたい。筆者(宇野源一、元自動車ディーラー)が日産ディーラーに勤務していたのは2012(平成24)年からの4年間。現行型エルグランドのデビューからしばらく経った時期だった。
当時、店舗の先輩社員たちから聞かされたエルグランドの話が印象に残っている。この車は、いまの国産ミニバン市場の礎を築いた存在だといっていい。もともとは日産の商用バン「キャラバン」と「ホーミー」をベースに誕生したモデルである。デビュー当時、多人数乗車車といえば、商用バンを流用した仕様が一般的だった。そこにラグジュアリー志向のミニバンという新しいジャンルを切り拓いたのがエルグランドだった。
初代モデル(E50型)は1997年に登場し、約5年間生産された。その後、地位を不動のものにした2代目(E51型)が発売され、エルグランドは「ミニバンの王者」として君臨することになる。
実際、筆者が担当を引き継いだ顧客の多くがE51型に乗っており、当時の人気の高さを肌で感じた。エルグランドの成功に刺激を受け、トヨタが「アルファード」を、ホンダが「エリシオン」を投入するなど、他社も高級ミニバンの市場に相次いで参入したのは記憶に新しい。
しかし、E52型へのフルモデルチェンジが転機となった。ちょうどその頃、トヨタがアルファードを本格投入し、エルグランドのシェアを奪い始めたのである。新型は、従来のFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)に変更され、デザインも箱型から乗用車寄りの台形フォルムへとシフトした。この判断が市場に受け入れられず、顧客離れを招く結果となった。実際、E51型に乗っていた顧客にE52型を提案すると、
「室内が狭い」
「走りが物足りない」
「アイポイント(運転時のドライバーの目の位置)が下がり、エルグランドらしさが失われた」
といった否定的な反応が目立った。なかには買い替え後に「失敗した」と嘆く顧客もいた。
さらに問題だったのが、異例に長いモデルライフである。一般的に6年程度でフルモデルチェンジが行われるなか、日産はE52型を大幅刷新せず、クルーズコントロールや自動ブレーキの追加といった小手先の改良にとどめた。その結果が、いまの市場シェアの低迷につながっていると見る向きは少なくない。
こうした認識は筆者だけではない。現在も現場で営業を続ける同期社員も、同様の見立てを口にしている。