自動車エンジニアは「保守的」「右傾化」しやすい? 車好きはトランプ支持? 業界特性とキャリアが思考を左右、米国研究を考える
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エンジニアの思考様式と政治的傾向

筆者(仲田しんじ、研究論文ウォッチャー)は先日、SNSで興味深いつぶやきを見かけた。米国の大学教授を対象にした別の研究によると、工学系は保守的になりやすく、理学系はリベラル寄りになる傾向があるという。これに対し、
「確かにそう感じる部分もあるが、学問の違いが思想にそれほど大きな影響を与えるとは思えない。脳の使い方によって視点が変わることはあるだろうが、それだけで政治的な立場が決まるわけではないはずだ」
という、業界関係者とおぼしき当人(日本人)の意見が投稿されていた。たしかに、これは個人の経験則に基づく見解なのだろう。
さて、当媒体はモビリティ経済媒体だ。もし学問の性質が政治的な傾向に影響を与えるのなら、自動車産業をはじめとするモビリティ業界のエンジニアたちも、多くが保守的な価値観を持っているのだろうか。
工学分野では、「既存の枠組みを最適化する」ことが重視される。このため、変革よりも維持を優先する傾向があるとされる。問題解決型の思考(ロジカルシンキング)が、安定志向や秩序を重視する価値観につながりやすいとも考えられる。実際、バージニア工科大学とパデュー大学の合同研究チームが2023年10月に発表した論文によると、製造業のエンジニアは、コンピュータ業界やエレクトロニクス業界、IT業界のエンジニアよりも保守的であることが明らかになっている。
この研究では、米国のエンジニア515人を対象に調査を実施。政治的イデオロギーと道徳的価値観の関係、さらには雇用分野や組織内の地位、人口統計学的な属性による違いを分析した。その結果、
「製造業(自動車、その他の製造業、石油・ガス業界)」
のエンジニアは、コンピュータやエレクトロニクス、IT業界のエンジニアよりも政治的に保守的であることが確認された。
では、エンジニアはキャリアを通じて政治的な志向が変化するのだろうか。研究によると、組織内で地位の高いエンジニアほど、より保守的な傾向が強いことがわかった。キャリアを積むほどに保守的になる可能性があるということだ。また、性別による違いもあり、女性エンジニアは男性エンジニアよりもリベラルな傾向が見られた。
この結果をどう解釈すべきか――。エンジニアの政治的傾向は、学問の違いだけでなく、業界の特性やキャリアの進み方によっても大きく変わるということだろう。