公共交通崩壊=医療崩壊? 北海道「通院100km」問題が示す、地域格差の辛らつ現実とは

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病院まで100km以上、公共交通も廃止寸前――地方の高齢者はどうやって医療を受けているのか。医療アクセスと交通の深刻な問題が浮き彫りになっている。冬の事故リスクや待ち時間の不公平に加え、タクシー不足も深刻だ。そんな中、公共交通の維持やデジタル技術の活用が解決の鍵になるのだろうか。

「医・食・住」

ローカル鉄道のイメージ(画像:写真AC)
ローカル鉄道のイメージ(画像:写真AC)

 人々の生活に必須の要素として「衣・食・住」といわれるが、現代では「医・食・住」というべきだろう。これらはデジタル化がいかに進展しようとも「リアル」すなわち実体が存在しなければ意味がない。このうち食品のような物品は本人の側が動かずに配送という手段がありうるが、

「どうしても本人が動かなければならないニーズ」

として最後まで残るのは医療である。

 遠隔医療も試行されてはいるが、とうてい実用レベルとはいえない。訪問医療では限られた診療内容しか提供できない。ほとんどの場合は受診者本人が医療機関に行く必要がある。すなわち「医療」とは

「交通」

の問題である。大都市でさえ、本人の通院や付き添いは時間的・労力的・経済的に大きな負担であることは多くの人が経験する。デジタル化の利点を強調する保険証のマイナンバー化で、

「かえって付き添いの必要性が増えた」

という苦情もある(『東京新聞』2024年12月3日)。

地域住民の受診困難

中頓別町から名寄市への移動イメージ(画像:OpenStreetMap)
中頓別町から名寄市への移動イメージ(画像:OpenStreetMap)

 北海道の住民の生活実態を調査した報告例がある。北海道の中頓別(なかとんべつ)町(人口1500人弱)では、町内に小規模の医療機関があるが専門診療科はなく、そこで対応できない場合は

「約100km先」

の名寄市に行く必要がある。同町には1989(平成元)年までJR天北線(JR宗谷本線の音威子府から中頓別・浜頓別を経由して海沿いに稚内まで)が通っていたが廃止された。廃止後はバス転換され、音威子府(おといねっぷ)まで出てJR宗谷本線に乗りついで往復することとなった。

 それも2017年以降はJRやバスのダイヤ変更で乗りつぎができなくなり、現時点(2024年12月)では名寄まで1日1往復の民間バス(完全予約制)があり、中頓別を朝7時に出発し、夕方6時半に帰着の日程で往復は一応可能である。

 しかしこうした都市間バスも最近は廃止が相次ぎ、綱渡り状態である。他に音威子府と町を結ぶデマンドバス(周辺町村と共同運行で、運行ダイヤは決まっているが予約がなければ運休)があり、時間帯によっては利用できるが制約が多いことは同じである。

 人によってはタクシーを使って他の人と乗り合わせで高額の費用を分担して往復する例もあるというが、このような負担のために受診自体を断念せざるをえない事態も起きる。地域により深刻度の差はあるが全国的に同様の状況である。そのタクシーさえ消滅の危機にあり、筆者(上岡直見、交通専門家)も小さな町でタクシーを利用してドライバーと話をすると

「自分が辞めたらもう終わりだね」

とよく聞く。こうした地域のタクシーは兼業が多く「半農半タク」などといわれるが、その農業も将来は厳しい。

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