なぜ「通学定期券」はこんなに安いのか? 明治から続く教育政策、国の教育予算でカバーすべき?
「通学定期券が安すぎる」と感じたことはないだろうか。この割引は明治時代から続く教育政策に基づいているが、その負担は今も鉄道会社が背負っている。通学定期券の割引分を誰が負担しているのか、そしてその解決策は何か。最近では神戸市が通学定期券代を全額補助する取り組みが注目されている。
鉄道割引の起源

JR西日本のウェブサイトには、通学定期券について
「修学上の経済的負担を軽減することを目的に大幅な割引」
と書かれている。関西大学経済学部の宇都宮浄人(きよひと)教授によると、これは
「国の教育政策の一環」
として明治時代に始まったものだという。
もともとは鉄道省の国鉄が導入し、それを民間会社もならって採用した。ただし、私鉄やバス会社は国鉄より少し割引率を抑えた形で始めたという(『プレジデントオンライン』2021年5月13日付け)。
つまり、通学定期券が安い理由や、現在のJRがほかより安い理由は、明治時代からの習わしが続いているということだ。
通学定期券の費用負担の現状

鉄道会社が国の主導で始めた通学定期券は、今でも鉄道やバスの事業者が割引分を負担している。通学定期を提供することで学生の利用を促し、将来的な顧客を獲得しようとしているため、行われている。
ただ、通勤や通学で公共交通を利用する人が多いなかで、定期券を使わず普通運賃で乗る人たちが、その割引分を間接的に負担している形になっている。
実際、JRの運賃は私鉄に比べてかなり高い。定期券の割引率が高い反面、こうした問題が生じているともいえるだろう。これは見過ごせない課題だ。前出の宇都宮教授は、
「通学定期の割引販売は教育政策の一環として始まっている以上、文部科学省の教育予算でカバーすべき」
と主張している。欧州などでは学割の費用は「すべて教育のための公費」から出ているもので、宇都宮氏の知る限りでは
「通学定期の割引コストを民間の事業者に押し付けている国は(日本以外)ない」
という。