EV開発の重要な布石? 「ITSジャパン」「中国汽研」提携にみる、日中自動車産業大転換の可能性

キーワード :
, , ,
ITSジャパンは10月、中国汽研と協定を締結し、協力覚書を締結した。その背景には何があるのか。

日中自動車産業の共同支援

ロボタクシー(画像:ポニー・エーアイ)
ロボタクシー(画像:ポニー・エーアイ)

 ITSジャパンは10月31日、中国汽車工程研究院股〇(=にんべんに分)有限公司(中国汽研)と協定を締結し、協力覚書を締結した。今後、両国の自動車産業の変革を共同で支援する。この締結がどのような変化をもたらすのか、両者の活動から検証してみよう。

 まず、日本側のITSジャパンの実態と活動を紹介する。ITSジャパンは、高度道路交通システム(ITS。交通事故や渋滞などの道路交通問題を、情報通信技術を利用して人、道路、車両を情報でネットワーク化することで解決しようとするシステム)分野の研究開発と実用化を推進する特定非営利活動法人である。

 1994(平成6)年にパリでITSに関する第1回世界会議が開催されたことを契機に、1994年1月、5省庁(当時:警察庁、通産省、運輸省、郵政省、建設省)の支援により、道路・交通・車両インテリジェント化推進協議(VERTIS)が任意団体として設立された。その後、2001年6月にITSジャパンと改称された。

 ITSジャパンの初代会長は豊田章一郎氏。現会長の山本圭司氏もトヨタ自動車出身(シニアフェロー)で、トヨタが主導してきた。同社、日産自動車、ホンダなどの自動車メーカーに加え、パナソニック、日立製作所、デンソーなどから13人の常任理事がおり、さらに学術界、団体、企業から28人の理事が参加している。

ITSジャパンの国際的役割

ITSのイメージ(画像:国土技術政策総合研究所)
ITSのイメージ(画像:国土技術政策総合研究所)

 ITSジャパンは、産官学が連携してITS全体の方向性を示し、推進する役割を担う団体だ。同時に、世界3地域を代表するITS3団体(欧州:ERTICO、米国:ITSアメリカ、アジア太平洋:ITSジャパン)のひとつとして、ITS世界会議を毎年共催している。

 また技術開発のみならず、政策や市場動向など幅広い視点からの情報交換の場を提供し、ITSの普及による交通問題の解決やビジネスチャンスの創出を主な活動としている。

 もう一方の中国汽研は、

・1965年:大型トラック研究所を母体とする国有企業として設立
・2012年:上海証券取引所に上場
・2023年1月:中国検査認証 (グループ) 有限公司と合併、現在に至る

という変遷を経ている。いわば中国の国家戦略の一翼を担いながら、中国自動車産業の研究開発、技術革新、技術サービスを提供し、自動車産業の発展を推進する組織である。

 それでは、ITSジャパンと中国汽研の提携が、日中両国の自動車産業をどのように変えていくのかを見ていこう。

全てのコメントを見る