EV開発の重要な布石? 「ITSジャパン」「中国汽研」提携にみる、日中自動車産業大転換の可能性

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ITSジャパンは10月、中国汽研と協定を締結し、協力覚書を締結した。その背景には何があるのか。

技術交流と規格統合

ITSがもたらす効果(画像:国土交通省)
ITSがもたらす効果(画像:国土交通省)

 中国汽研のウィーチャットのアカウントによると、ITSジャパンとの覚書締結式に際して、

・インテリジェントネットワーク車両の試験・評価技術
・指標や規格
・試験装置
・車両と道路の協調

などについて、広範な意見交換を行ったとしている。このことは、両者が今後、次のような面で協力・連携を示唆している。

・自動運転普及・発展に向けた連携
・各種規格や規制の調整・統合
・SDV標準化
・開発スピードの迅速化
・安全に関する技術開発の促進

 ITS分野の最先端技術をリードする両者の提携は、新たなロードマップを予感させ、期待が高まる。

 ここからは推測だが、おそらく

「ソフトウェア定義車(SDV)」

がメインになるだろう。SDVとは車両の機能がソフトウェアによって更新されることを前提に開発された自動車を指す。

 表向きはアライアンスだが、SDVの標準化については日中間の綱引きが活発になりそうだ。標準化でどちらが主導権を握るのか、両国がそれぞれの技術開発を競うなかで主導権争いがどのように展開されるのか、興味深い。

ロボタクシーの未来

ITSジャパンのウェブサイト(画像:ITSジャパン)
ITSジャパンのウェブサイト(画像:ITSジャパン)

 ITSジャパンを牽引するトヨタにとっても、今回の提携は今後の電気自動車(EV)開発の重要な布石と見ることができる。

 トヨタは2019年8月、中国の自動運転スタートアップである小馬智行(ポニー・エーアイ)と提携し、中国での自動運転の公道実験を共同で展開すると発表した。2023年8月には、広汽豊田汽車有限公司(広汽トヨタ)を加えた3社で、自動運転タクシー(ロボタクシー)の量産を目指した合弁会社を設立している。

 また、2023年11月に上海で開催された第6回中国国際輸入博覧会では、電気クロスオーバーSUV「bZ4X」をベースに開発した自動運転タクシーのコンセプトモデルが展示された。同車には、ポニー・エーアイが開発した第7世代レベル4自動運転乗用車システムが搭載された。

 トヨタが中国のスタートアップ企業と提携して実現させたいロボタクシー事業は、日中間の新たな協力関係や補完関係の可能性を感じさせる。

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