自転車の「青切符」導入 危険運転に効果てきめんも、摘発強化より情報周知が先決だ
新制度の交通社会への影響

こうしたなか、警察庁は自転車の交通違反に対する新たな対策として、交通反則通告制度の適用に向けた検討を開始した。交通反則通告制度とは要するに、交通違反に対して青切符を発行し、反則金を科すことで処理する制度である。日本テレビの取材によると、反則金は3000~2万5000円くらいになる可能性があるという。
前述したように、これまでは自転車運転者に対する交通違反は赤切符による刑事手続きの対象であった。しかし、これには効果的な取り締まりがともなっていなかった。これに対し、青切符制度は違反の迅速な処理を可能にしている。また、反則金を科すことで、自転車利用者の安全運転に対する意識の向上も期待できる。
一方、こうした新たな法的措置の導入は、交通社会にどのような影響を与えることが期待できるのだろうか。まず、当の自転車使用者以外の人物、特に歩行者にとっては好ましい一歩と映るだろう。特に歩道を歩いているときなど、傍若無人な自転車に悩まされてきた人にとってはそうだろう。
これについては、自転車関連団体である自転車産業振興協会(東京都品川区)の自転車に関する意識調査でもデータが出ている。
2021年の調査では、全体の62.2%が
「自転車ユーザーはもっとルールとマナーを守るべき」
と回答。さらに50.2%が「違反は積極的に取り締まるべき」と答えている。つまり、自転車を取り巻く風当たりは厳しい。とはいえ、法を順守した運用には、自転車利用者の視点も忘れてはならない。
具体的な取り締まり対象の課題

まず、実際に取り締まりが行われた場合の運用方法から考えてみよう。
青切符取り締まりの対象になるとしても、具体的に何を取り締まるのかという大きな問題がある。夜間無灯火やふたり乗りなどは取り締まり対象として異論を挟む余地はない。
問題は歩道逆送や並走、一時停止無視などで、多くの自転車利用者は違反であることにほとんど気づいていない。これらは一見小さな違反のように見えるが、歩行者や自動車との衝突など重大な事故の引き金になりかねない。
しかし、違反そのものが軽微で、事故が発生する前に青切符が出されてしまうと、取り締まる側とされる側との間で感情的なもめ事に発展するかもしれない。
もちろん、違反を取り締まるのが法の精神だが、無用なあつれきを生むことなく、スムーズに安全意識を高められるに越したことはない。