トヨタ株主総会 米助言会社が「豊田章男会長」選任に反対推奨した本当の理由 賛成率11ポイント減少の裏側とは

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6月14日に実施されたトヨタの株主総会で、異変が起こった。同社会長の豊田章男氏の取締役再任への賛成率が84.57%と、前年の95.58%から大きく低下したのだ。その背景には何があるのか。

板挟みの年金基金

『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ――若き日のバフェットに学ぶ最強の投資哲学』(画像:ダイヤモンド社)
『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ――若き日のバフェットに学ぶ最強の投資哲学』(画像:ダイヤモンド社)

 年金基金は、受益者(退職給付を受ける従業員)に代わって、基金を預かって運用する「受託者」の立場にある。受託者として、ふたつのことが求められている。

 ひとつは、適切にリスク管理しつつ、なるべく高いリターンを得られるように運用すること。もうひとつは、ESG(環境経営・社会的責任・ガバナンス)に問題のある企業への投資を行わないこと。

 このふたつの目標は、ときに矛盾することがある。その矛盾が大きく表れたのが、2022年だ。2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻で原油価格が大きく上昇し、化石燃料関連株が大きく上昇した。化石燃料ビジネスを「悪」と見なして投資から除外していると、2022年は運用パフォーマンスが極めて不振となっていた。

 米国の著名投資家ウォーレン・バフェットは傘下の投資会社バークシャー・ハサウェイを通じて、化石燃料関連の割安株に大量に投資していることで有名だ。そのため、2022年のパフォーマンスは非常に良好であった。バフェット氏は、

「ESGを基準に投資判断しない」

と述べている。

 年金基金や基金を預かって運用する投資顧問会社も、2022年はパフォーマンスを悪化させないために、いろいろな理由を付けながら、化石燃料のビジネスを行う企業への投資も維持していく必要があった。

 その際、化石燃料ビジネスを行う企業に投資する理由として、当該企業が

「化石燃料事業だけでなく、再生可能エネルギー事業にも積極注力している」

ことや、

「議決権行使を通じて脱炭素を加速することを要求している」

ことなどを訴える必要があった。そうした流れが、トヨタへの議決権行使にも表れたと見ている。

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