H3ロケットでも再び! 三菱重工が近年「大型プロジェクト」に相次いで失敗している理由
1兆円投じたスペースジェット事業撤退

三菱重工の大型プロジェクトの失敗はこれにとどまらない。
1か月前の2023年2月には、国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発中止を正式に発表したばかりだ。
スペースジェットは2008(平成20)年にMRJ(三菱リージョナルジェット)として始まったプロジェクトだが、再三にわたる納入の延期などが影響し、2020年には事実上、事業が凍結されていた。
スペースジェット開発に投じられた費用は1兆円とも報じられており、国費まで投入した「日の丸ジェット」構想は完全に頓挫した。三菱重工の大型プロジェクトが相次いで失敗している背景には何があるのか。
H3の部品には民生品を活用

H3の打ち上げ失敗に関しては、2段階でエンジンを燃焼するうちの第2段エンジンが着火しなかったことが原因と考えられている。
なぜ第2段エンジンが着火しなかったかについては、何らかの要因で許容以上の電流が生じる「過電流」が起き、電源が遮断された可能性が高いというのがJAXAの見方だ。もっとも、H3初号機の当初の打ち上げ予定時期は2020年度で、すでに2度打ち上げは延期されていた。H3の開発が計画通りに進んでいなかったことは明らかだ。
そもそも、H3の開発をめぐっては、三菱重工は厳しい制約に直面してきた。H3は現行の主力ロケット「H2A」に比べてひと回り大きい一方、1回打ち上げるのにかけることのできるコストはH2Aが約100億円なのに対し、H3は
「約50億円」
とおよそ半分だ。
こうした条件をクリアするために進められたのが既存の民生品の活用で、H3には多くの自動車向け部品が転用されている。民生品の転用はコストを抑えられ納期も短縮できるメリットがある一方、地上環境を前提に製造されており、過酷な宇宙環境で正常に機能するのか、リスクも伴う。
もちろん、H3に使われた民生品はテストを経て宇宙でも正常に作動するものが採用されたはずで、失敗の原因が究明されていない以上は、その原因を
「民生品の転用」
に帰すことはできない。しかし、H3に要求される厳しいコスト水準が三菱重工だけでなく下請けにも圧力となって重くのしかかり、現場を疲弊させた可能性を指摘する声が出ているのも事実だ。
ちなみに、H3を発注したJAXAの2022年度予算は1552億円だが、宇宙開発で世界をリードするアメリカは航空宇宙局(NASA)の2023会計年度(2022年10月~2023年9月)予算に
「260億ドル(約3兆4000億円)」
を計上している(日本の約22倍)。日本の宇宙開発の懐事情が厳しい点も踏まえておく必要があるだろう。