EV急速充電規格はすでに4つ! 「普及前夜」の今こそ統一を【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(1)
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世界統一規格への機運
一方、環境規制に関しては風雲急を告げている。2020年9月の米国カリフォルニア州知事による2035年ガソリン車、ディーゼル車禁止の新ZEV規制宣言に始まり、欧州ではCO2規制、LCA規制、タクソノミー規則と続き、2021年7月14日には欧州委員会が2035年にガソリン車・ディーゼル車のみならず、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車を含む全ての内燃機関車の販売を禁止する包括案「Fit for 55 package」を公表した。
包括案を織り込んだ上での対応であろうか、ドイツのダイムラーは7月23日、高級車部門であるメルセデス・ベンツの全ての新車を2030年までにEVにすると公表している。しかし、急激にEVが増えてくると、急速充電規格は全世界で4つもあることから、このままで良いのかという課題が出てくる。
自動車メーカー側からすれば、どのような急速充電規格を選ぶかは、仕様を決定する上で難しい選択肢となる。なぜならいったん選択すると、販売してしまったクルマに対して変更することは困難だからである。また一歩間違えればユーザーからの大きな不満材料となる。
折しも、日本と中国の共同開発案件として超急速充電規格ChaoJi(チャオジ:中国語で超級)が開発中であり、2022~2023年の実用化を目指している。このChaoJiプロジェクトにはテスラをはじめ、欧米の自動車メーカーなど約60の企業・団体も参画している。最大出力900kWとこれまでにない大出力も可能であり、充電口の大きさも液冷を採用したことで従来の規格と比べて極めて小さい。
EVと充電インフラはクルマの両輪であり、EVが環境規制により急拡大するのであれば、充電インフラも変わることが望ましい。拡大するユーザーに対応するためにも、急速充電規格の統一化は必須であろう。そのためには、自動車メーカー、急速充電規格団体が集まり、次世代充電規格をどうするか、早急に詰める段階に来ているのではないだろうか。
車両開発は、開発から市場投入まで時間を要することもあり、筆者の勝手な考えかもしれないが、例えば「2025年から順次ChaoJi規格に統一する」など、方針を明らかにすべきであろう。過去の軋轢を乗り越え、いよいよ世界統一規格の必要性が高まってきている。