燃料電池車の販売低迷 「水素ステーション」無いから売れないのか、はたまた売れないから無いのか 一体どちらだ?

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水素ステーションの普及が進まず、地方自治体が導入した燃料電池車の水素充填に苦労する例が関西で相次いでいる。水素普及を打ち出した政府の戦略には暗雲が漂う。

政府の推進計画に大きな遅れ

EV等保有台数統計(画像:次世代自動車振興センター)
EV等保有台数統計(画像:次世代自動車振興センター)

 政府は世界で初めて2017年に水素基本戦略を策定し、FCV普及に向けた行動計画をまとめた。そのなかで、FCVの国内保有台数は2017年の約2000台を2020年に4万台、2030年に80万台へ増やすとした。

 水素ステーションは2017年の約100か所を2020年に160か所、2030年に

「900か所」

へ広げるという高い目標を掲げた。トヨタが世界初のFCVとなるミライを発売するなど、水素関連の技術は当時、日本が世界最先端を進んでいただけに、国内保有台数、水素ステーション数とも2020年以降、飛躍的な伸びを期待していたわけだ。

 さらに、政府は2020年に菅義偉首相(当時)が2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を宣言したのを受け、グリーン成長戦略を2021年に取りまとめた。再生可能エネルギー中心の社会を築くための産業政策と、再エネ分野の行動計画を盛り込んでいる。

 そのなかで、水素は太陽光や風力とともに将来の基幹エネルギー源と位置づけられた。自動車関係では燃料電池トラックの国内市場を立ち上げ、世界へ輸出するとともに、水素ステーション設置のコスト削減に取り組むとしている。

 しかし、思惑通りに事態は進んでいない。燃料電池実用化推進協議会によると、水素ステーション数は政府目標の2020年160か所をどうにかクリアしたものの、その後伸び悩んで2023年1月末現在で

「164か所」

にとどまっている。都道府県別で見ると、岩手、愛媛、長崎など12県はいまだにゼロ。栃木、新潟、熊本など17県は1か所しかない。

 FCVの国内保有台数は次世代自動車振興センターのまとめで2020年度末に約5000台。世界的に電気自動車(EV)の普及が急速に進むなか、トヨタやホンダ、韓国現代自動車のFCVは販売不振が続き、政府目標に遠く及ばない。

 2022年5月末の台数も約7000台。他社に新規参入の動きがなく、状況打開の兆しは見えない。

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