地下40m以深の大深度地下工事は本当に安全なのか? 「リニア中央新幹線」では50km以上が適用区間、調布陥没事故2年で考える
約2年に発生した事故
東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事による影響で発生した、東京都調布市の陥没事故から、10月18日で2年が過ぎた。事業を行う東日本高速道路(東京都千代田区)は2023年春以降、緩んだ地盤の補修工事を行う。
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ただ、東名~関越間で2022年2月25日から本線トンネルのシールドマシンが掘進を再開したものの、掘削機のカッターが損傷し、工事は停止。11月に入って再開されている。そして、12月からは関越自動車道と交わる大泉ジャンクション付近の工事現場でも、2基の掘削機のうち停止中の1基の掘削が再開される予定だ。
さて、陥没事故の記憶が風化し始めているため、話を改めて整理してから進めていこう。事故は2020年10月18日に調布市東つつじヶ丘2丁目で発生した。この地域では同年9月中旬に地下約40mを掘削機が通過していた。それに前後して、工事による振動で
「住宅の外壁の一部がはがれた」
などの苦情が、調布市や工事業者に多く寄せられていた。陥没は午前8時頃始まり、13時には市道に幅5m、長さ3m、深さ5mほどの穴が空いた。住民にも避難が呼びかけられ、工事も中断した。
陥没したのが道路上であり、人的被害が出なかったのは幸いだったが、大深度地下工事は安全と見られていたため、迅速な原因究明が求められた。大深度地下とは、地下40m以深、または、建築物の基礎杭の支持地盤上面から10m以深の地下を指す。東日本高速道路が設置した有識者会議によると、事故発生2か月後の2021年2月、トンネル工事と陥没の因果関係を認定している。
報告書によれば、騒音の苦情を受けて夜間は工事を中断していたところ、上から土砂が沈み込み、掘削機のカッターが詰まるトラブルが発生するようになった。そこで、土砂を取り除くため、土を柔らかくする薬剤が注入された。結果、周辺の地盤も緩み、掘削時にトンネル上部の土砂が過剰に取り込まれた。さらには、掘削しやすいように薬剤が工事中も使われたため、トンネル上部に空洞が生まれて陥没につながったとされている。