「ドル箱特急」を失った北越急行 損失は毎年数億も、復権に向けた投資家デビューと比類なき先見性

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「ドル箱」の特急はくたかを失った北越急行。しかし同社は復権に向けて、着実に前へ進んでいる。

延命治療はいつまで持つのか

新潟県南魚沼市にある「北越急行」の本社(画像:(C)Google)
新潟県南魚沼市にある「北越急行」の本社(画像:(C)Google)

 投資家としての北越急行の成績はどうだろうか。もちろん、投資なので毎年の成績にブレはあるものの、基本的に毎年

「1.5億円前後」

の利益が発生している。一見、順調そうだが、会社全体としては、まだまだ特急はくたかの穴は埋められていない。

 例えば、北越急行の第38期決算公告(2021年4月~2022年3月期)を見ると、本業である鉄道事業において、いわゆる収入に当たる営業収益が約3.5億円であることに対し、支出に当たる営業費は12.8億円となり、約9.3億円の営業損失を計上している。ここに約1.6億円の有価証券利息収入があるが、営業損失の穴を埋めるには程遠い。そこに、そのほかもろもろの収支を計上すると、当期(第38期)純損失は約5.1億円となる。

 このように、北越急行を取り巻く経営状況は厳しい。驚異的な営業係数でため込んだ資産(株主資本)の合計は、特急はくたか廃止直後の2015年3月末には約130億円あると言われていた(日本経済新聞より)が、前出の決算公告ではついに大台の100億円を下回り、約95億円まで減少した。もちろん、毎年1.5億円前後の利益を生み出している投資活動は引き続き実施するべきだが、あくまでも

「延命治療」

としての役割しか果たしていない。

 加えて、特急はくたか廃止直後の北越急行の試算では、年間3.5億円程度の損失で30年間会社が存続できるとしていたが、実際はコロナ禍の影響もあり毎年5~8億円の損失が発生している。2022年3月時点での資産が約95億円であるところ、仮に今後毎年8億円で損失が発生すれば、北越急行の寿命はあと12年程度。つまり、このままでは当初の想定よりも早く北越急行が消滅してしまうことになるのだ。

 投資活動をもっと積極的に行って有価証券利息の増収を狙い、延命治療ではなく収益の大黒柱のひとつとして確立すれば、北越急行消滅へのカウントダウンは止まる。だが、積極的な投資活動で破滅してきた企業はこれまで数えきれないほどある。いかに適格機関投資家と言っても、安易に投資活動で増収を狙っていくのは得策とは言えない。

 やはり、さらに別の糧道が必要になるだろう。それは1本の太い糧道でも良いし、複数の細い糧道でも良いが、とにかく現状の延命治療状態から脱却する必要がある。もちろん、簡単なことではないだろう。

 ただ、北越急行には今も昔も変わらず持ち続けているものがある。それは、鉄道業界内で常に一歩先を行く姿勢だ。その姿勢さえ崩さなければ、北越急行は延命治療状態から脱却し、再び活躍してくれるかもしれない。

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