問われる北海道新幹線の「存在意義」 旅客優先か?それとも貨物か? 青函トンネル高速化実現が突きつける日本の行く末とは
旅客と貨物、共存の模索

言うまでもなく、旅客(北海道新幹線)は切り捨てられない。その一方で、前項のように、貨物も切り捨てられない。そうなると、旅客と貨物の共存を目指していくこととなる。新幹線の低速走行問題を解決しようと、現在まで、下記を代表例としたさまざまなアイデアが検討されてきた。
・貨物けん引用電気機関車の改造
・「トレイン・オン・トレイン」構想
・「第2青函トンネル」の建設
・「時間帯区分方式」による高速走行
簡単そうな印象を受けるのが、貨物けん引用電気機関車を改造し、速度を向上させる構想だ。だが、速度を向上させるのであれば、最低限フル規格の指標である200km/hは出せるようにしなければならない。技術的に不可能ではないだろうが、改造には多額の費用がかかる上、けん引される貨車にも高速走行に耐え得る改造を施さなければならない。そうなると、貨物の高速輸送を専門に行う「貨物新幹線」の開発と同義になってくる。
そういった貨物新幹線に準ずるのが「トレイン・オン・トレイン」構想だ。フル規格レベルでの走行が可能な専用車に、貨物のみならず貨車ごと丸々積載して、青函区間を高速輸送しようというものだ。トレイン・オン・トレインについては試験車両も開発され、度々実験が行われてきたが、技術的にも費用的にも高い壁が立ちはだかっている。
旅客と貨物、双方の理想をかなえる共存は難しいことがおわかりいただけただろうか。そして、
「共存が無理ならば貨物専用線をもうひとつ建設してしまえ」
という半ば暴論的な構想が、第2青函トンネルの建設だ。詳細は、本媒体で8月9日に配信された「第2青函トンネル」、ネックはやはり財源か? 道内の物流網強化に立ちはだかる現実の壁」を参照してほしいが、技術的に不可能ではないものの、現在の青函トンネルの建設がそうであったように、膨大な費用と時間がかかり、半ば現実離れした構想となっている。
このほかにも書ききれないほどの案が出されたが、結局、現実に採用されたのは、「時間帯区分方式」による高速走行だ。
これは、年末年始やゴールデンウイーク、お盆期間といった旅客の最繁忙期かつ貨物の最閑散期に限定し、かつ時間帯を限定して、新幹線が青函トンネル内を最高速度210km/hで走行するというものだ。2020年年末より取り組みが開始され、直近では2022年のお盆期間にも実施された(詳細は国土交通省の発表を参照)。