問われる北海道新幹線の「存在意義」 旅客優先か?それとも貨物か? 青函トンネル高速化実現が突きつける日本の行く末とは

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青函区間で140~160km/hまでスピードダウンを強いられている北海道新幹線。旅客をとるか、貨物をとるか。日本の未来を左右する究極の2択を、青函トンネルが突き付けている。

青函区間における安全性とは

北海道木古内町にある木古内駅(画像:(C)Google)
北海道木古内町にある木古内駅(画像:(C)Google)

「安全性に配慮した速度」を順守するため、スピードダウンを強いられている新幹線。この安全性とは具体的に何を指しているのだろうか。

 最もわかりやすいのは、先行する貨物列車に後続の新幹線が追い付いてしまうという事態を避けることだろう。現行の貨物列車は100km/hで走行していることに対し、新幹線は設計上260km/hでの営業運転が可能だ。先行する貨物列車から見ると、本領発揮して相対速度160km/hで迫ってくる新幹線は恐怖を感じるほど危険な存在だ。

 ただ、安全性の課題はこれだけではない。細かい問題まで深堀りすると枚挙にいとまがないため、代表的な課題をあとふたつ紹介しよう。

 ひとつは、すれ違い時の安全性だ。

 読者の皆さんも、列車同士のすれ違いにおいて、対向列車からの気圧の変化を感じたことがあることだろう。それでも列車が安全に運行できているのは、新幹線なら新幹線、在来線なら在来線なりにすれ違い時の気圧の変化が考慮されているからに他ならない。

 だが、あらゆる面において双方の規格が大きく異なる新幹線と在来線がすれ違うとなると状況が変わってくる。貨物列車、特に脱着可能なコンテナ車においては、260km/hの新幹線とすれ違うと、積載している貨物が落下、場合によっては対向列車に衝突し、大事故に発展してしまう恐れがある。また、現行の貨物けん引用電気機関車では、気圧の変化による車体の損傷や、運転士の身体に悪影響を及ぼす可能性もあり得る。

 もうひとつは、新幹線軌道確認車(確認車)の走行時間と、保守点検に要する時間の確保だ。

 確認車とは、新幹線が高速走行(フル規格の本領を発揮するような速度での営業運転)を行う前に、線路上に落下物等の異物がないかを確認する作業用の車両のことだ。現行のように、新幹線が在来線特急並みの速度で営業運転を行う場合は、必ずしも毎日確認車を走らせる必要はないが、高速走行をするのであれば、毎日確認車を走らせる必要がある。同様に、保守点検についても、対象路線が在来線並みの速度で運行している限りは毎日実施とはならないが、高速走行をする場合は、毎日の実施が必要となってくる。

 北海道新幹線開業前の資料になるが、2012年に国土交通省において開催された「第2回青函共用走行区間技術検討WG(ワーキンググループ)」における複数の資料を総合すると、新幹線が当該区間を高速走行する場合、青函区間における確認車の稼働と保守点検に要する時間は、毎日合計6時間程度と試算されている。もちろん、確認車が走行している時間は、他の列車の走行はできない。「深夜の6時間ならば平気」と思われがちだが、新幹線とは異なり、時間帯を問わず走行している貨物列車にとっては運行の障害となり得る。

 こうした理由を代表としたさまざまな背景により、今日も青函区間では新幹線の減速運転が行われている。高速運転が持ち味の新幹線であるが、あくまでも安全性の保証という大前提をクリアした上で成り立つということを忘れてはならない。

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