なぜ路線バスの「車内事故」はなくならないのか? 重傷者の82.8%が高齢者! ドライバーを追い詰める運行現場で何が起きているのか――路線維持を脅かす安全問題の行方
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事故の3割を占める車内転倒リスク

運賃が手ごろで、誰もが日常的に利用する路線バスだが、乗車中に事故に巻き込まれる危険はゼロではない。一般には他の車との衝突など、車外で起きる交通事故が思い浮かびやすい。しかし、実際に最も多く発生しているのは「車内事故」だ。事故事例全体の3割(2024年実績で33.4%、2025年調査で34.8%)を占め、事故の種類別では最多となっている。
車内人身事故とも呼ばれるこの事故は、走行中の急な加減速による転倒や、降車を急ぐあまり停車前に席を立つ行為、スマートフォンに気を取られて手すりやつり革をつかみ損ねることなど、日常の何気ない場面で起きる。
乗客が車内でバランスを崩し、座席や手すりに体を打ちつけると、被害が深刻になることも多い。負傷の内訳を見ると、打撲(全体の31%)や骨折(同43%)、むち打ち症などが目立つ。とりわけ大腿骨近位部骨折などを負った高齢者は、日常生活の動作や歩行機能が低下し、長期の療養を余儀なくされるほか、後遺症に苦しむ例も少なくない。
乗客の不注意が原因となるケースもある。一方、運行現場では、他の車の強引な割り込みや歩行者の急な飛び出しを避けるためにブレーキを踏まざるを得ず、その結果、車内で乗客が転倒するという難しい状況が日常的に生じている。車外の危険を避けた結果、車内で負傷者が出れば、ドライバーや運行会社は民法や労働契約法に基づく安全配慮義務違反を問われ、損害賠償を求める訴訟に発展する恐れもある。
車内事故が起きると、現場検証によってダイヤが乱れ、運休にともなう運賃収入の減少も生じる。さらに、事故対応による管理業務の負担増や保険料率の引き上げ、安全性に対する社会的な信頼の低下にもつながる。発生を防ぐことが難しい車内事故は、バス会社の採算を悪化させ、事業基盤を弱める深刻な経営上の負担となっている。