物流網を蝕む「8.2兆円」の歪み――商品価格に潜むコスト負担の行方【短期連載】1リットルの重み(3)
見えにくい物流の限界が、いま価格として表れ始めた。小売167兆円のうち物流費は約9兆円、だが実態は15.7兆円規模に膨らむ。8.2兆円の不足は誰が負うのか。300円が315円になる現実を前に、負担配分の議論は避けられない。
持続可能な物流網への転換

持続的な物流網という課題は、最終的に
「物流費を誰がどれだけ負うのか」
という配分の問題に行き着く。これまでのように
・価格への上乗せを抑え
・トラック事業者に負担を寄せる
というやり方は、物流網を保つうえで限界に達している。一方で、すべてを価格に反映させる方法も、物価上昇による経済への影響が懸念される。物流業界にも、
・さらなる効率化の推進
・多重下請けの見直しによる中間取り分の削減
など、解決すべき課題が残る。
本来であれば、政府が物流網の維持に必要な費用の水準を示し、そのうえで負担の分け方を明確にする必要がある。例えば、今回の試算で示した不足分8.2兆円のうち、効率化で3割、税の軽減で1割を吸収できれば、残る6割、すなわち約5兆円が市場で負担されることになる。これにより、物価上昇の影響をある程度抑えることも可能だ。
消費者への負担が急に重くならないよう、時間をかけて物流費を商品価格に上乗せしていく方法も考えられる。公共交通の機能低下は移動の制約にとどまるが、物流網の機能低下は
「日々の暮らし」
そのものに影響する。場合によっては、金を払っても物が届かない事態も起こり得る。
価格への上乗せといった個々の対応も重要だが、「物流費を誰が負うのか」という論点を深めることが、持続的な物流網への第一歩となるだろう。