物流網を蝕む「8.2兆円」の歪み――商品価格に潜むコスト負担の行方【短期連載】1リットルの重み(3)
見えにくい物流の限界が、いま価格として表れ始めた。小売167兆円のうち物流費は約9兆円、だが実態は15.7兆円規模に膨らむ。8.2兆円の不足は誰が負うのか。300円が315円になる現実を前に、負担配分の議論は避けられない。
消費者が負担すべき「安定輸送の対価」

今回の試算で見えてくる8.2兆円は、本来は商品価格に上乗せされるはずだった費用を、トラック事業者が負ってきたともいえる。もっとも、この試算は小売販売に限った物流費であり、社会全体で見れば8.2兆円を上回るのは確実だ。政府は、適正な原価を守るための施策を進めている。これが進めば、トラック事業者の収益は持ち直す見込みだ。
一方で、生産者や小売の利益が削られ、商品価格や物価の上昇によって消費が弱まるおそれもある。税負担の軽減もひとつの手立てではある。だが、前述の「現状と課題2025」によると、トラック事業者の自動車関係の税や法人税などを合わせた納税額は約1.1兆円にとどまる。8.2兆円の不足を埋めるには規模が小さく、効果は限られる。
結局、8.2兆円という重い負担を誰が引き受けるのか――という問題に行き着く。生産者、小売、トラック事業者、そして消費者の間でのせめぎ合いである。
物流費は、もはや運賃の問題にとどまらない。食料品や日用品を含む多くの価格に影響する課題である。物流の機能低下という事態を避けるには、ある程度の物価上昇を受け入れる局面に来ている。これまでの
「物流は安く使える」
という前提は成り立たなくなりつつある。消費者もまた、安定した輸送に対してどこまで負担するのかを考える必要がある。