物流網を蝕む「8.2兆円」の歪み――商品価格に潜むコスト負担の行方【短期連載】1リットルの重み(3)
見えにくい物流の限界が、いま価格として表れ始めた。小売167兆円のうち物流費は約9兆円、だが実態は15.7兆円規模に膨らむ。8.2兆円の不足は誰が負うのか。300円が315円になる現実を前に、負担配分の議論は避けられない。
物流費の全体規模

そこで、食料品や日用品にかかる物流費を試算した。日本ロジスティクスシステム協会の「2024年度物流コスト調査報告書」(以下、物流コスト調査報告書)によると、売上高に占める物流費の割合(全産業)は5.44%である。
また、経済産業省の「2024年小売業を振り返る」では、2024年の小売販売額は167兆1530億円に達した。この数値から計算すると、その5.44%にあたる9兆931億円が物流費となる。
トラックには営業用と自家用があるが、全日本トラック協会の「日本のトラック輸送産業現状と課題2025」(以下、現状と課題2025)によれば、食料品や日用品などの消費向け貨物の輸送は、82%(輸送トン数ベース)を営業用が担っている。これを踏まえると、トラック事業者が担う物流費は7兆4563億円となる。
問題はここからである。物流コスト調査報告書によると、物流費の上昇分を価格に反映できたかについては、
・対応できた:31.8%
・少し対応できた:52.3%
・未対応:15.9%
だった。およそ7割で、上昇分を十分に反映できていない。
「対応できた」を100%、「少し対応できた」を30%、「未対応」を0%として試算すると、本来必要な物流費は15兆7007億円となる。トラック事業者が受け取れていない額は8.2兆円に及ぶ。
この8.2兆円を小売販売額167兆1530億円に上乗せすると、全体でおよそ5%の上昇となる。例えば300円の商品は315円程度になる計算だ。